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Re: Mistake . ( No.20 )
日時: 2010/09/04 05:34
名前: 凜 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)

#04 ( 発生 )

「どうだった? 会社」
 ダイニングテーブルに花柄の可愛らしい茶碗に盛った炊きたてほかほかの白米をこれまた可愛らしいピンクのプレートにのせて運んでいる里子が、頬笑みながら聞いてきた。
「んー、なんか変な同僚ができた」
 因みに俺の言う変な同僚とは愛沢 瀬菜のことである。
「あは、何それ! 女の人ー?」
「あはは」と笑いながら面白そうに里子は"変な同僚"に食いつく。
「うん、それもめっちゃ美人。なのに変人」
「美人……」
 急に里子の表情が曇る。……しまった、里子の前で"美人"は禁句だった。
 昔から里子は自分のたれ目ぎみの目が嫌いで、自分の顔に自信が無く、俺が他の女性を美人だというと途端に機嫌が悪くなってしまうのだ。
 それをすっかり忘れてしまっていた俺は、落ち込んでいる里子にまるで言い訳をしているように冷や汗を流しながら、里子の気持ちを落ち着かせようとする。
「大丈夫だよ、俺は里子が一番美人で可愛いと思ってるし」
「凌君だけに可愛いって思われてたってしょうがないもん。みんなに可愛いって思われたいんだもん。それに、凌君浮気するかもしれないし」
「しねぇよ、浮気なんて。ほんとにそいつ、めっちゃ変人なんだって。俺の似顔絵っつって腐ったジャガイモ描いたり"フレッシュリーマン"っていうダサダサなあだ名付けたりすんだよ」
「似顔絵描いたり、あだ名付けたりするほど仲良くなったんだ、美人な人と。良かったねぇ」
 嫌味っぽく言い放つ里子。
──墓穴掘ってどうすんだ、俺。

* * *

「あー」
 結局昨日は気まずいまま眠りについた俺は、今朝もどうすることもできずに家を出た。
 会社に着いても俺は昨日の言動を後悔して、自分の席で「あー」とか「うー」とか言いながら項垂れていた。
「どしたの、柏木」
「あ、愛沢。……お前のせいで!」
 勢いよく椅子から立ち上がり、両手を熊が襲いかかるように高く上げて「うがー!」と叫んだ。そんな行動がとれたのは、この会社は七時までに出勤すれば良く、まだ部屋に俺と愛沢の二人しか居なかったからだ。
 そんなことまでちゃっかり確認してからやる俺の性格が恨めしい。何故昨晩は"何事も確認してから"で石橋を叩き過ぎて割るような俺の性格が機能しなかったのだろうか。ああ、本当に自分が恨めしい。
「は、ちょ、何よいきなり!」
 愛沢はそう言って目にもとまらぬ速さのハイキックを俺に食らわせやがった。

「ふーん、それで彼女と喧嘩したと」
「はい」
「完全に八つ当たりね」
「……すいません」
 俺はハイキックを食らった後、愛沢に事情を聞かれ、愛沢の説教を正座で聞いていた。
「しかしお前、タイトスカートでよくあんなハイキックが」
「黙れ、今そんな話じゃない! ったく、社会人になったらもう人を蹴ったりしないようにしようって思ってたのに!」
「学生の時どんだけ蹴ったんだ……」
「うるさいうるさいうるさーいっ!」
 愛沢は頬を膨らませながら怒鳴った。