コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.27 )
- 日時: 2010/09/04 01:19
- 名前: 凜 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
#07 ( 違和感 )
「里子、昨日はごめん! ほんとに、ほんとに俺は里子がいればそれだけで良いと思ってるから」
「……ほんと?」
里子は疑わしいと言わんばかりに、眉間にしわを寄せ睨んでいる。
「本当。絶対。それでな、今日、里子に似合うネックレスがあって。買ってきたんだ」
俺は上着の右ポケットから、アクセサリーショップで丁寧にラッピングを施してもらった箱を取り出した。中に入っている物は言うまでもなく、愛沢に選んでもらったあのネックレスだ。
俺は頬笑みながら里子に渡し、里子も嬉しそうにそれを受け取った。
箱に結ばれた赤いリボンを解き、ゆっくりと傷つけないように丁寧に、テープで止められたラッピングの紙を剥がしていく。
喜んでもらえるのか。急に不安になった俺は、テープを剥がす里子の指をじっと見つめた。喜んでもらわないと俺的に……いや、俺の財布的に困るのだ。
愛沢が選んだあのネックレスは今超人気のモデルがデザインしたものだったらしく、八万円プラス税という驚愕の値段であった。愛沢的には"妥当"な値段らしいが、俺的には全然妥当ではない。信じられない。
しかし里子の喜ぶ顔が見たい。機嫌も直してほしい。散々悩んだ末、最後は愛沢の
「男なら男らしく太っ腹で買え!」
という男よりも男らしい発言で買う事を決心したのだった。なに、一ヶ月間昼食百円生活くらいなんとかなるさ。
「わあ」
突然の里子の声に多少体が跳ねたが、大丈夫だ。里子には気づかれていない……ことを願う。
「すごーい! 凌君、よく私の好みわかったね!」
里子は小さなジャンプを何回もしている。その度に彼女の着ている真っ白な膝丈のスカートが揺れる。何故かそれだけのことにドキドキしてしまった自分が恥ずかしい。これじゃ愛沢の言うとおり変態じゃないか。
「つけてみな、きっと似合うよ」
「……じゃ、凌君つけて? 私、凌君に後ろからネックレスつけてもらうのが夢だったの」
里子がはにかみながら言うもんだから、こういう少女漫画でありがちのことをやるのは苦手だったけど、愛する彼女のためだと思い笑顔で承諾した。
里子はふふっと笑うと、早速ネックレスを俺に渡して後ろを向いた。ネックレスの両端を両手の人差し指と親指でそれぞれ持ち、後ろから抱き締めるようにしてネックレスをつけてあげた。
「ん、つけたよ」
「やった、また私の夢が一つ叶った! ……どう? 凌君。似合うかな?」
里子はさっと振り向き、上目づかいで俺を見る。
「似合うよ」と言おうとした瞬間、何故か違和感があった。
店で見たあの可愛らしいネックレスと、何かが違う気がした。
だが里子の首元のネックレスをじっくり見ても、やはり店で見た時のネックレスに間違いないはずなのだが、何かが違う。
店で見た時はもっともっと可愛いくて綺麗でキラキラした印象だった。今里子がつけているものも確かに可愛いくて綺麗なのだが、どこか……透明感というか、光り方が違う気がする。キラキラしていない。しかしネックレスは同じ。何故だ? 何が違うんだ。
──相手? 確かに店のときは愛沢で、今は里子だ。だけどそれでキラキラしていない気がするというのなら、まるで俺が里子より愛沢のが似合うとでも言いたいようではないか。そんなわけない。
俺の可愛い里子と変人口悪な愛沢なんて比べ物にならない。
……だけど、いくら考えてもそれしか答えは出なかった。
「凌君? やっぱり、似合わないかな?」
暫く固まっていた俺に、里子が不安そうに聞いてくる。俺は慌てて
「そんなことないよ。似合ってる」
と言いながら、さっき出した答えを否定するように里子を強く抱きしめた。