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Re: Mistake . ( No.29 )
日時: 2010/09/04 01:20
名前: 凜 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)

#09 ( 出会い )

「おらー! 愛沢コラ、社員食堂行くぞコラ!」
「柏木、人格変わってる」
 愛沢は鬱陶しそうに眉をひそめて俺を睨んでくるが、そんなのどうでもいいんだ。俺は今、とにかく幸せなのだ。やっとリッチな昼食に戻れる。
「一ヶ月ぶりの社員食堂だからな! コンビニのサラダのみというOLのダイエットみたいな昼食から抜け出せたんだ。人格も変わるさ!」
「暑苦しいー」
 右手は自分の顔に向け仰ぐマネを、左手は俺の右肩を遠慮なく力いっぱい叩いてくる愛沢なんて気にせず、俺はただただ喜びに浸っていた。俺ってある意味すごいと自分でも思った。

「ああっ、このわいわいした賑やかな感じ! ああっ、あの天才的な速度で掃除をするおばちゃん! 一ヶ月ぶりに帰ってきたぞ。この俺が!」
「何にしようかなー。あ、ハンバーグ食べたいかも」
「おい愛沢、早く決めろ!」
「うっせーんだよさっきから! 柏餅にしてやろうか!? ぺったんぺったんってついてやろうか!?」
 突然キレた愛沢がそんな恐ろしい言葉と共に繰り出したのはあのハイキック……ではなく、脛を狙ったローキックだった。ハイキックがくると予想し胸辺りで両手を交差してガードをとっていた俺は予想外の攻撃を見事にガードできずにがっつり食らい、痛い痛いと言いながら床を転げまわるのであった。

* * *

「早く完食しなさいよ。あんた仕事もとろいのに食べるのまでとろいの?」
「お前が速すぎるんだよ……。まだ十五分も経ってねぇぞ」
 俺は愛沢に散々罵られながら千二百円もする肉うどんを世界新記録ではないかというスピードですすっていた。早くこの中傷地獄から抜け出したい。まずはやっぱり汁から味わおうなんてやってる場合ではない。
 愛沢がそんな中傷という名の精神的攻撃を始めてから十分後、俺達の方へラーメンと思われるものをのせたプレートを持って近づいてきた男がいた。その男はどんどん俺達の方へ近づいてきて、ついに俺達が座っている席の目の前に立った。
 俺は勿論、愛沢も珍しく驚いているのか何の言葉も発さない。そんな無言の状態が数秒続き、最初にその無言を破ったのは近づいてきた男だった。
「隣、いいですか?」
 男は俺達の警戒心を解くように、にっこりと微笑んだ。