コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.30 )
- 日時: 2010/09/04 01:24
- 名前: 凜 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
#10 ( 峰岸先輩 )
「誰?」
愛沢。お前、この会社には俺以外タメ口をきける……というかタメ口をきいていい人物は俺だけなのに、何故そんな堂々と"誰?"なんて失礼なことが言えるんだ。しかもこんなかっこいい人に! 明らかにエリートな上司様なのに!
心の中でエリート上司様と思われるお人にすいませんすいませんと何度も謝る半面、本当に愛沢の言うとおりだとも思った。誰だこのかっこいい人。
「ああ、ごめんね。俺は峰岸 怜。お前等とは違う課だが、結構近いよ」
峰岸 怜さん? 名前は聞いたことあるな。確か俺達の二つ上の先輩で、女性社員からものすごい人気だとか何だとか……。それに仕事もできて、男性社員からも憧れの的だって聞いた。
やっぱりかっこいいから人気があるのか。髪は暗めの茶色。肩につくかつかないか位の長さで、超をつけてもいいくらいのストレート。しかもさらっさらだ。くせ毛な自分からしたら、心底羨ましい。
目尻が少しつり上がっていて、クールな印象を与える。輪郭もしゅっとしてて……。いいな、ずるいな。とにかくかっこいいぞ。非の打ちどころがないとはまさにこのことか。愛沢もあんなに口が悪くなければ良かったのに。
……じゃなくて、とにかく峰岸さんに謝らなければ。愛沢が"誰?"なんて言ってしまってすいません。俺も"誰?"と思ってしまってすいません、と。
「す、すいません峰岸先輩! ちょっとこいつ……愛沢が失礼な発言をしてしまって」
「いやいや、別にええよ」
以外にあっさりと、しかも笑いながら許してくれた。
なんて優しい先輩なんだ! 惚れてまうやろ! ……ちょっと古いか。
「あれ? "ええよ"って貴方関西出身……あぶな、敬語敬語……。あ、あーゆーふろむ関西?」
俺が"惚れてまうやろ!"とハンカチで口をおさえながら叫んでる間に、素朴な疑問をたどたどしく尋ねた。そんなに敬語になれてないのか愛沢。というか、敬語じゃなく英語になってるぞ愛沢。
「ああ、せやねん。仕事中とかは標準語にしてんねんけど。やっぱ普段はリラックスしてるからかな。出てまうねん。まあ多分意味わからへんことはそんなないやろうけど、もしあったら言ってな」
峰岸先輩は人懐こい笑顔をした。擬音語を使うとするならば"にかっ"ってとこだろう。そんなクールな中に時々見せる少年ぽさ、人懐こさがまた人を惹きつける一つの魅力だろう。
「関西のどこ出身な……んですか?」
「三重や。松坂牛、美味いで!」
「いや松坂牛のことは聞いてないんですけど」
愛沢は真顔で峰岸先輩のお勧めを一蹴した。
「えーっと、君が柏木 凌太君。君が愛沢 瀬菜ちゃんやな? いやー二人とも良いルックスしてんな!」
峰岸先輩に言われると、なんか嫌味に聞こえる。だって仕事もできるし優しいしかっこいいパーフェクトな人に言われても……な。まあ愛沢は満更でもないような顔をしているが。
そんなことを悶々と考えていると、突然峰岸先輩が笑顔で変なことを言いだした。
「で、二人は付き合ってるん?」
「ほ?」
思いもよらないことを言われ、間抜けな声を発したのは俺だ。それも仕方ないと思う。だって間抜けな声を発するほど変なことで、ありえないことだから。
「私がこのヘタレと? ないですないです、ありえない」
「あ、愛沢と以下同文です! というか俺には同棲中の彼女がいます!」
「なんだ」
"つまんない"ということをたった三文字で表した峰岸先輩の表現力に俺は精一杯の拍手を送ろう。さすがです峰岸先輩! 尊敬します峰岸先輩!