コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.36 )
- 日時: 2010/09/14 19:05
- 名前: 凜 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
#13 ( もう一人のエリート )
朝六時半、いつものように一番に出社できたかと思いきや、愛沢がいた。
不意打ちで後ろから頭でも叩いてやろうという小学生のような考えで愛沢に近づくと、男の姿が見えて、慌てて資料が積み上がっている自分のデスクの陰に隠れた。
「誰だっけ、あの人」
知っている人のような気もするが、名前が出てこない。やばい、老いたかな。もう老化現象が始まったか?
必死に思い出そうと愛沢の隣にいる男を見ていると、二人の距離が近いせいか、愛沢の顔までどうしても目に入る。
……愛沢が、すごい楽しそうに笑ってる。今まで見た事のない笑顔で。
──なんだ、あんな顔するんじゃねえか。俺と居る時はいっつも意地悪い顔で嘲笑ったりしてるのに、今は心底楽しそうな笑顔だ。
「……なんか苛々してきた」
ばっかじゃねぇの、と自分でも思う。自分以外の同性と喋ってて苛々するって女みたいじゃん。それも嫉妬深い女。
俺は暫らく自己嫌悪に陥った。
それから十分程して、それまで愛沢と喋っていた男がドアを開け出ていった。
あ、因みにうちの会社はなんかデザインが無駄にお洒落だ。部屋の壁やドアがガラスで出来ている。よってスケスケの丸見えだ。某人気アイドルのデビュー曲衣装並にスケスケだ。そんな例えいらないか。
「あれ、柏木じゃない。何してんの? 頭でも打った?」
愛沢がいつの間にか俺の後ろに体育座りをしていた。多分自分のデスクに向かっていた時に俺のデスクの下に何か……というか俺がいるのに気が付いたのだろう。愛沢のデスクは悲しいかな俺の右隣だ。
「え? あー……うん」
とりあえず俺は愛沢の問いには頭を打ったということにしておいた。
だって隠れて見てたなんて言ったら絶対また変態呼ばわりされることは確実だから、ちょっとした嘘をついた。しかしこの嘘は熊から身を守るための死んだふりのようなものだ。多分俺に非はない。全ては愛沢の暴力のせいだ。
「あんた本当にドジね。蹲って痛がってる暇あったら仕事しなさいよ仕事!」
「はいはい」
投げやりに返事をしながらデスクの下から出る俺に、何故か愛沢は眉間にしわを寄せながら微妙な顔をしている。……何か変なこと言ったかな、俺。
「あ、そういえばさっき喋ってた人って誰?」
パソコンを開き電源を入れ、パスワード入力画面が出るのを待っている間に、さりげなく聞いてみた。
「ああ、あの人? 如月先輩。あれ、あんた知ってるよね? 峰岸先輩と同じ課の」
「如月先輩……」
如月先輩と言ったら確か峰岸先輩と同い年で、かなりエリートだとか。あー、そういえば峰岸先輩が別れ際に言ってた気がする。「如月はあかんわ」って。
何がダメなのか聞いても「なんとなく」としか答えてくれなかっから話半分に聞いてたけど、確かになんかあやしい雰囲気はする。気がする。俺もよくわかんないけど。
とにかく、俺の中で如月先輩は要注意人物だという位置づけになった。
▽ New Character
如月 翔(きさらぎ しょう) - 男性