コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:   Mistake . ( No.43 )
日時: 2010/10/06 22:31
名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)

#15 ( 如月先輩 )

「なんだ、聞いてるんじゃん。で、何で俺の名前知ってんの?」
「う、あ、そのー……峰岸先輩からちょっとお名前をお聞きしたんで」
「峰岸……」
 それまで、恐怖までもを感じるぐらいにこにこしながら話していた如月先輩の顔が急に曇った。眉間にしわを寄せたまま動かなくなってしまった如月先輩。どうしたものか。
 とりあえず俺は固まってしまった如月先輩を改めてじっくり見てみた。おお、かっこいいぞこの人! ……峰岸先輩といい如月先輩といい、この会社にはかっこいい人が多いな。
 でも如月先輩は峰岸先輩とはまた違ったかっこよさというか、可愛い? っていう感じなのかな、どっちかというと。
 目はくりっくりの丸い目で、ぱっちり二重。
 黒髪で右側は肩につく長さなのだが、左側は肩より五センチ位上。左右非対称のこの髪型は確か……アシンメトリーというやつか。毛先はパーマでも当てているのか少しはねている。
 背は……峰岸先輩が百七十四センチだって聞いたような。それより少し低い。大体百七十センチ位だろう。因みに俺もそれぐらい。
 とにかくいつも笑顔で、フレンドリーで接しやすいしあの可愛らしい顔が母性本能をくすぐるとかいってこれまた女性社員から人気だ。だが仕事に対するやる気はあまり無いらしく、同性からはあまり支持されてない。
 峰岸先輩と同期なんだと。毎年新入社員は男女一人ずつなのだが、如月先輩は有名な大学の成績トップで卒業したとかなんとかで特別入社したらしい。成績は良いのに何故仕事はしたくないのだろうか……。謎だ。
 俺がじっと見つめていると、それに気付いたのかしばらく固まっていた如月先輩が困ったような顔で言った。
「あ、ごめんごめん。峰岸か、そっか。あいつ何か言ってた?」
「いや、特にこれといったことは聞いてませんけど……」
 これは別に嘘じゃないんだ。「あかんわ」って言っていただけで、本当にこれといったことは話していないし。
「そっか、ならいいんだ。あ、それで本題は仕事のことなんだけどさ」
「あ、はい」
 如月先輩は峰岸先輩が俺に自分の事を何も話していないということを知ったら、ほっとしたのかすぐ笑顔になった。
 何か知られたくないことでもあるのか? ますます妖しいな、おい。

「っていうわけで、俺と柏木君が一緒に外回りすることになったから、よろしくね。……まあ今日だけだけど」
「ああ、よく分かんないですけど了解しました」
「ええっ、何で分かんないの? あんなにいっぱい説明したのに!」
「いっぱい説明されすぎてわけ分かんなくなりました……。要は僕と如月先輩が一緒に外回りするってだけなんでしょう?」
 結局は最後の"一緒に外回りする"という八文字だけでよかったのに、なんか如月先輩はものすごい喋りまくった。説明というかお喋りだった。ただの世間話になっていったところから、もう俺は頭がボーっとしてた。
「そうそう、そうなんだよ。なんだ、分かってるんじゃん柏木君!」
 あははと笑う如月先輩に、もう何も言う気が無くなって、俺も力無くあははと笑った。何が"あはは"か。何も面白くないよ! 心の中でツッコミながら。