コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.70 )
- 日時: 2010/10/28 18:52
- 名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
#20 ( お詫びにやって来ました )
自分の課に着き、ドアのガラス越しに愛沢の席を見たが、そこに愛沢の姿はなかった。
まだ課長と話しているのか、もしかしたら入れ違いになったのか。色々な可能性を考えたが、とりあえずドアの前で考え込んでも邪魔になるだけなので自分の席に戻った。
昼食前にやっていた仕事の残りをやるために、パソコンを開き電源ボタンを押した。何故かいつもは気にならないパソコンが起動する音が、やけにうるさく感じる。
パスワード入力画面が出るとほぼ同時に、四文字のパスワードを打ち込んだ。すると"ようこそ"の文字が……あれ?
「フリーズ……」
砂時計のアイコンに、なんか無性に腹が立った。いや、左クリックしまくる俺が悪いんだけど。クリックしすぎたら止まりやすいなんてもう常識だってのに。
「あー、くそっ」
「なぁーにをそんな苛立ってんねん」
「だってこれ……うわっ!?」
声のした方を向くと、不機嫌そうに唇を尖らせている如月先輩がいた。
し、神出鬼没にも程がある……!
「クリックしすぎでフリーズて。機械オンチか」
唇の端を吊り上げて笑う如月先輩は、ちょっと峰岸先輩に似てると思った。言ったら殴られそうだから本人には言わないけど。
それにしても、一体何の用だろう。まさかまた外回り……なんて、無い無い。あったら困る。
「上司に言われて不本意やけどお詫びに来ましたぁ」
ああ、なるほど。そういう事か。如月先輩の機嫌が悪いのはきっと"何で俺が謝らなあかんねん"みたいなそんな感じだからか。
とりあえずこの不機嫌そうな如月先輩の機嫌を直すには話を変えるしか方法はないと思った俺は、何気ない質問を投げかけてみた。
「そういえば如月先輩って関西の方出身なんですか?」
「うん。三重」
三重? ってことは、峰岸先輩と一緒か。あ、危ない危ない。「峰岸先輩と一緒なんですね」とナチュラルに言うところだった。そんなこと言ったら九十パーセントの確率で蹴られる。
「……あいつと一緒やねん。高校」
「え?」
「峰岸と」
ええ? まさか如月先輩の口から峰岸先輩の名前が出るとは。っていうか高校一緒だったのか。いや、あの仲の悪さだと昔何かあったとは思ってはいたけど。
「最初はな、そこまで仲悪いってわけでもなかってんけど……って、すまん仕事中やったな。昔話始めるとこやったわ」
如月先輩はそう言って、いつものにこにこ笑顔に戻った。そして「じゃあねー」と爽やかに出て行った。
結局お詫びの言葉は何一つ聞いていない気がするが、まあ何事もなく帰ってくれたから良しとしよう。
パソコンに視線を戻すと、青の背景に"ようこそ"の文字が表示されていた。放置が一番の安全策っていうのも、また常識か。
「さて、仕事仕事……」
気を取り直してパソコンの隣に置いてあった資料に目を通していると、課長室のドアが開き、愛沢が出てきた。