コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.86 )
- 日時: 2010/11/01 22:43
- 名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
【Special Episode】
#02 ( 転校生 )
高校二年の六月。雨の日が多くて、いつもは騒がしいクラスの奴らもどこか元気がなくなった。
その日も雨やったけど、前日のホームルームで転校生が来ると担任が言うとったから、クラス中その話題で持ち切りやった。
「怜、お前はどんなん来ると思う?」
「知らへん。ちゅーかどうでもええし」
友人の若田、通称"ばかだ"に話題を振られたけど、俺は特に興味も無かったし心底どうでもよかったから適当に流した。
別に有名人が来るわけちゃうし、何でそんなテンション上がるんやろ。
頬杖をついて、窓の外の景色を眺める。景色っつってもグラウンドしか見えへんけど。
「窓際っちゅーもんはええなぁ」
一番後ろ、窓際の席。一か月程前の席決めのくじ引きで運良く当たった席。
授業中寝ててもあんまし気付かれへんし、夏場は風が入って涼しいという理由で特に男子の間ではかなり人気の席や。
いや、ほんま当たってよかった。実際教科書立てとけば八十パーセント位の確率で寝てても気付かれへんもん。最高。……当てられたら気付かれるけど。
窓際の席の有難みを感じながら、意味も無くグラウンドを眺めていると、教室の入り口のドアがガラガラと音を立てて開いた。
「席につけー」
とお決まりの台詞を言いながら入ってきたんは七三で汗だくでシャツが透けている担任。確かに最近蒸し暑いけど、さすがに透けるほど汗かかへんやろ……。
「今日は転校生がきてる。入ってこーい」
担任に呼ばれ、おずおずと俯きながら入ってきた転校生。教室がざわめき始める。
その転校生は暑さのせいか白シャツのボタンを第二ボタンまであけている為、鎖骨あたりで何か光っとるんが見える。多分ネックレスでもしてるんやろ。
髪型は気取ってんのか知らんけど、他は真っ黒やのに右の襟足だけ赤色で、しかもやけに長い。脇くらいまである。
うちの高校は頭髪は自由で、金髪とかメッシュとかしとるやつがおる。けど右の襟足だけ長いなんておかしなやつは見たことない。
因みに俺は染めてないのに暗めの茶色。中学ん時は、地毛やっちゅーのにものっそい怒られた。それが腹立ったから、頭髪自由のこの高校を志望した。
「じゃあ……峰岸の隣な」
昔の事を思いだしとると、突然自分の名前が出て、驚いて体が少し跳ねた。どうやら転校生は俺の隣の席らしい。……あ、自己紹介聞いてへんかった。名前何や。
転校生は無表情で指定された席についた。何じゃこいつ。白けたやつやなぁ。気ぃ合わなさそ。
とはいえこれから同じクラスとしてやっていくんやから、ある程度は仲良くなっとかなあかんやろうし、とりあえず話しかけてみた。
「なあ、どっから来たん?」
「……東京。さっき言うたやん」
転校生はこちらも見ずに吐き捨てるように答えた。聞いてなかったのは確かに俺のせいやけど、冷たい。蒸し暑いはずやのにちょっと冷えた。
あれ、そういえば東京から来たんに関西弁? 関西出身なんかな。
新たに疑問が生まれ、懲りずにもう一度聞いてみた。
「関西出身なん?」
「うん。こっち住んでたんやけど、親父の転勤で東京行って、また帰って来た」
「へぇ。ところで、名前は?」
「は?」
聞いた瞬間、睨まれた。あー、自己紹介聞いてへんかったのバレへんように上手く聞いたつもりやったのに。絶対"こいつ聞いてなかったんかい"って思ってるわ。
その後は、何を聞いてもシカトされるようになった。
そら怒るわ。名前も聞いてへんかったんかいこいつ、と。俺も逆の立場やったら怒るわ。
……仲良くなるどころか、最悪なやつと思われたやろなぁ。結局名前も分からへんし。いや、それは後で他のやつに聞けばええか。今悩むべき事はこれからどうやって隣の転校生と仲良くなるかやな。
いやもう最悪仲良くならんでええんちゃう? せや、最初から気ぃ合わへんやろと思っとったんやからええわ。もうどうでもええわ。
早くも試合放棄した俺は、転校生……ばかだに聞いたところ如月翔というらしい男を"いけすかない白けたヤツ"として位置づけした。