コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.89 )
- 日時: 2010/11/02 19:36
- 名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
【Special Episode】
#03 ( 意外な一面 )
如月が転校してきてから一ヶ月経った。顔は所謂イケメンというのに分類される感じやし、やっぱ女子の間では人気らしい。
やけど男子の間では、あんまり人気がない。や、勿論俺も好きやないけど。
何やねんあのカッコつけは! って、みんな口癖みたいに言うとる。や、俺も同感やけど。
日本史の授業中、ふと隣の如月を見ると赤いボールペンをものすごい速さで上下に振っとった。
時々首を傾げながらペン先を見る。で、また振る。振る。振る。あー……インク切れたんか。やるやる、それ。けど振っても出えへん時がほとんどやで。
何や必死になって振りよる姿がおもろくて、思わずにやけてまう。そんなに赤色使いたいんかいお前。
「貸したろか? ボールペン」
俺がそう言った途端、如月は目を見開いて俺を見た。
それから三十秒程間を置いて、如月は言った。
「いらん」
"言った"というか"吐いた"の方が正しい気がする。たった三文字の言葉を、たった三文字だが氷の様に冷え切った言葉を吐いた。ああ、初めて話したあの時と一緒や。
いらん、やと……? お前は赤のボールペンが使いたくて使いたくて仕方ないんじゃないんかい、ぼけ! カッコつけ!
出かかった言葉を飲み込み、精一杯の笑顔で言った。
「遠慮すんなって、ほれ」
左手で握っていた赤のボールペンを右手に持ち替え、如月の前に差し出した。俺って優しいなぁ、惚れ惚れするわ。……と自画自賛しながら。
やけど如月はすぐ自分の机の上に置かれたボールペンを俺の机の上に投げ返した。
「いらんっちゅーねん。インク返すん面倒やろ」
インク……? 何言うとるんこいつ。インクなんか別に返してくれんでもええのに。
え、もしかして相当几帳面とか? この右の襟足だけやけに長くて赤色のやつが? そんなまさか。いや、ほんとは外見だけで判断したらあかんのやろうけど。
「お前、むっちゃ几帳面やったりする?」
「は? 借りたもん返すんは当たり前やん」
インクは普通返さへんやろ……。
その後も何回も貸してやる言うたけど、絶対いらん言うから諦めることにした。
──頑固やけど、結構ちゃんとしとるんやなぁ。思っとったより悪いやつやないかもしらん。
ちゅーか最初から俺が一方的に嫌っとっただけか。シカトしたんも俺が聞いてへんかったからやし。何や、結局俺が悪いんやないかい。
嫌なやつやと思ったことを反省して、もう一度、仲良くならなあかんと思った。
「如月、一緒に食おうや」
その日の昼食時に早速如月を、弁当を一緒に食べようと誘った。
「嫌や」
が、断られた。一刀両断。しかも「きしょっ」と目が言っている。……そらそうや。我ながらきしょい。
いや、でも、ここで諦めたらそこで終わりや。ジ・エンドや。頑張れ俺! 耐えるんや俺!
「んなこと言うなって。ほら、屋上の横の非常階段、あそこ誰もおらへんねん。ドア開けとけば風も通るし結構涼しいで」
「一人で行ってきたらええやん。ほんで階段で足踏み外して頭打って死.ね」
「一緒に死のう。で、一緒の墓に入ろうやないか」
「プロポーズかっ」
あれ、プロポーズした気はなかったんやけど……? どこで間違ったんやろ。
ちゃうって、プロポーズとかどこで間違ったとかどうでもええねん。如月と弁当を食べるっちゅー事は仲良くなる第一歩やねんから、ここは粘らなあかんねん。