コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.92 )
- 日時: 2010/11/03 21:32
- 名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)
【Special Episode】
#04 ( 仲良くなろう )
「ほんならもうここでええわ。ちょ、お前もうちょっとそっち行け」
「何で俺の机で食おうとしてんねん!」
如月はとりあえず無視して、青のギンガムチェックのバンダナで包まれた弁当箱を如月の机に置いた。
「おま、ほんま意味分からへん……」
如月は呆れたようにため息まじりに呟いた。その後、諦めたように勢いよくパイプ椅子に腰掛ける。パイプ椅子は古いせいか、ギシギシと音を立てた。
とりあえず、第一の難関突破……ってとこか。かなり強引やったけど。
如月が鞄から弁当箱らしき物を取り出して机に置いたのを見て、慌てて俺も自分の椅子を如月の机の横に持ってきて座る。
弁当箱が包まれているバンダナの結び目を解いていると、嫌な沈黙が続いて、俺はその空気に耐えきれず今まで疑問に思っていた事を聞いてみた。
「お前さー、なんで襟足だけ長いん? しかも右だけ。しかも赤色」
俺の問いに、如月は右手で持っていた弁当箱のフタを裏返して机に置き、そのおかしな襟足を人差し指でくるくると弄りながら答えた。
「オシャレや、オシャレ。地毛ちゃうけど」
地毛……ちゃう? っちゅーことは、まさかの?
「え、カツラ?」
あ、しまった。思わずド直球で言ってもうた。いや、でも地毛ちゃう言われたらそれしかないやん。
さすがに高校二年でカツラはないやろって思っても、地毛やないなら絶対カツラやん。薄毛もしくはハゲに悩むかわいそうな高校生としか思えへんやん。
そんな俺の予想は、如月の次の言葉で只の妄想と化した。
「嫌な言い方すんなあほ。エクステじゃ」
「エク……スイーツか」
「何で襟足にスイーツ付けとるん俺。ちゃうわい、髪に付ける人工の髪の毛、みたいなん」
「ほー……。オサレでんなぁ」
あくまで感心して、最近の高校二年生はすごいなぁという気持ちで言うたのに、如月は「馬鹿にしてんのか」と言って俺の頬を抓った。
やっぱり如月は冷たいやつやと思う。
「そういやお前、誕生日いつや」
聞いてから、弁当箱の中の唐揚げに箸を刺して口に運ぶ。
ペットボトルに入ったお茶を飲んでいた如月は、飲み口から唇を離して口に含んだお茶をごくりと飲み込んで、口を開いた。
「明日」
「おまあひははんひょーひはん?」
驚いて、まだ先程口に入れた唐揚げが残ってるっちゅーのに声を発してもうた。自分では"お前明日誕生日なん?"と言ったつもり。
「何言うとるか全然分からへんし。何て?」
眉間にしわを寄せ、聞き返してくる。
「ひょっひょまっぺ」
今度は"ちょっと待って"と言ったつもりや。
俺は急いで口の中の唐揚げを飲み込んだ。けど、まだ十分に噛んでへんかったせいか唐揚げは予想以上に大きく、飲み込んだ瞬間咽た。
「お前……あほか」
涙目になりながらげほげほと咳き込む俺に、如月は冷やかな視線を送ってきた。
背中擦るとか、お茶を渡してくれるとかしてくれへんのかい、と恨めしく思いながら必死で水筒のコップ代わりのフタを開け注ぎ、すぐさま飲む。
──そうか、明日誕生日なんか。何かプレゼントとかあげたらええかなぁ。
そんなことを考えながらお茶を飲んどると、今度はお茶が気管に入って咽た。
如月は咽まくる俺を気にもせず、一人弁当を食べ続けてた。