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Re:   Mistake . ( No.126 )
日時: 2010/12/14 21:09
名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: BojjKUtd)

【Special Episode】
#07 ( 帰り道 )

 バツだらけになって返却された小テストのプリントを見て、俺はがっくりと肩を落とした。自分の名前の横には数字で二十二と書いてある。二十二点。
 惜しくないか? あと四点やで、四点。あと四問できとったら、俺は暇で幸せな放課後タイムを遅れたというのに!
「お前どうやった?」
 如月はひくひくと口元を引きつらせて、持っていたプリントを俺の机の上に放り投げた。机の上の如月のプリントに視線を移すと、同じく名前の横に点数。……十一? 十一点?
 俺は、この壊れかけのラジオもとい壊れかけの如月を、どう慰めたらええんやろうか。ヘタに慰めへんほうがええんかな? いやそれも友達としてどうやねん。
「ぽ……ぽっきーの点やん。美味そうな点やな」
 く、苦しいっ。我ながらこれは苦しい! 如月も睨んでるし、やけど他にどうすればええんか分からへんし!
 たった今自分が発した言葉をそれはもうこれでもか、というくらい後悔していると、それまでただ口元を引きつらせているだけで無言だった如月が、テストが返却されてから初めて言葉を発した。
「ほんならそれ、食ってもうてええで」
「や、それは勘弁……」

 居残り補習は午後七時から始まり、午後九時の完全下校時刻までみっちりがっつり行われた。もうなんか頭使いすぎて痛なってきたわ。
 如月と一緒に帰りにいつも利用する駅に向かって歩いていると、如月がぽつりと呟いた。
「あー疲れた。もう嫌や、補習なんか。ほんまにちゃんと勉強しよ……」
「せやな」
 如月の言葉に深く同意する。そう、元々俺も如月も勉強が不得意っちゅーわけやない。典型的な"やればできる"タイプ。ちゃんと勉強しとったら定期テストとかも学年五位以内には入るし。
 言い訳みたいになるけど、今回は偶然勉強してへんかっただけで……あかんやん。それがあかんのやん。ああもう自分を守ろうとすれば守ろうとする程くだらない言い訳になる。
 俺が悶々と考えていると、それまで俺の前を歩いていた如月が急に立ち止まり、そのせいで俺が如月にぶつかってしまった。
「いてっ。何やねんお前、急に止まんなや」
 文句を言うと、数秒置いてぴょんっと小さくジャンプして如月が振り向いた。
「なあ峰岸、今日この後暇?」
「特に何もないけど」
 そう答えると、如月の表情が一気に明るくなった。どこからか「キラキラー」という効果音が聞こえてきそうなくらいに。……何や如月が明るいと変な感じするなあ。何考えとるんやろこいつって思ってまうし。
 そんな俺の不安をよそに、如月はきらっきらな笑顔で尋ねてくる。
「ほな、どっか遊び行かへん?」
「はあ? 二人で?」
「うんっ」
 語尾にハートマークが見える。いや、きしょいのはわかる。俺やって自分で言うててきしょい。やけどほんまに見たくないのに見えんねん。見えてまうもんはしゃあないやん。
 あーなんか見たないのに見えるて幽霊みたいやん、とあほな事を思いながらも、遊ぶと言っても何処で遊ぶのか分からへんかったから「何処に?」と行き先を尋ねた。
 如月はすっかり暗くなった空を見上げていたが、しばらくして何か思いついたのか視線を空からこちらに移した。
「えーっと、じゃあゲーセンとか。あ、せや。帰りラーメン食って帰ろ」
 ゲーセンとラーメン……男子高校生丸出しって感じやな。まあええけど。普通に好きやけど、そうゆうとこ。
「ラーメン代はおごったるよ。あ、一杯分だけやけど」
「……そりゃどーも」
 三杯くらい頼んだろ思ったのに。変なとこ鋭いよな、こいつ。まあそんな量いくらなんでも入らへん事は確実やったけど。