コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Mistake . ( No.99 )
- 日時: 2010/12/13 21:42
- 名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: BojjKUtd)
──昨日、学校から帰っている時にふと目に付いたのは、店から出てくる幼い女の子と、多分やけどその子の父親。
ちゅーかむしろ、その女の子が嬉しそうに両手で抱えている紙袋。ピンクの花柄の紙袋はやけに可愛らしくて、嫌味半分本気半分、如月にぴったりやと思った。
多分ここで何か買うたらあの紙袋に包んでもらえると思い、立ち寄った。……が、何を買うかまったく決めていなかったせいで、三十分くらい店の中をぐるぐる回っとった。
「あ、そういえば今日」
授業中の出来事を思い出した。そういえば、赤いボールペン、インク切れとったよな?
ボールペンが並べられているコーナーへ移動したけど、ファンシーなデザインの物ばかりで、男向けなものは一つも無かった。さすがにプレゼントの"本体"までファンシーやと使わへんやろなぁ。
「これ……ええんちゃう?」
やっとわりとシンプルな物を見つけたと思ったけど、クリップ部分にハートが描かれていた。やけど、もうこれ以上のシンプルな物は無い。
他の店行けばええやん、と自分でも思った。でもなぁ、何やここがいいっていうか今更違うとこ行くってのも負けた気がして嫌や。よし──!
「嫌がらせか」
如月にあの紙袋を渡した後、睨まれてもうたから、購入までの経緯を話した。そしたら、一層鋭い視線で睨まれた。
如月はため息をつきながら紙袋を開け中の赤いボールペンを取り出した。じっくり取り出したボールペンを眺める。その後、如月は信じられへん言葉を口にした。
「俺、赤色嫌いやねんけど」
……え? いやいや、必死で振りよったん誰じゃい。お前やろがい。
開いた口が塞がらない状態な俺を見て、如月はふっと嘲笑うように口端を吊り上げた。
「昨日のあれ、引っ越す前に友達から貰ったやつ。使い切ってねって言われたから使っとっただけやもん」
そんなエピソードあるとか聞いてへんで。俺は少し泣きそうになりながらも、自虐的な言葉を発した。
「ほなそれ、いらんやん」
「いる」
如月は意外にも即答した。赤色嫌い言うたん誰じゃい。お前やろがい。気ぃ遣ってくれんでもええのに。変なとこ優しいっちゅーか、何て言うか……。
それまで階段の一段目に腰掛けていた如月が、立ち上がり一歩一歩俺に近付いてくる。壁にもたれかかっていた俺の五センチ程手前で立ち止まる。結構な近さになって、俺は顔を背けた。
「別に無理して使ってくれへんでも」
「いるって。ちゅーかもうこれ俺のもんやろ?」
「せやけど……」
返す言葉が見つからず、口を噤む。如月の顔を盗み見すると、勝ち誇った様な顔をしていて、鼻についた。
如月は振り返り、また先程まで座っていた階段の端の方に座る。俺は背中をずるずると擦りながら、膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
「峰岸」
「んー?」
不意に自分の名前を呼ばれて、少し驚きながらも床を彷徨っていた視線を如月に向ける。視線を感じたんか、俯いていた如月は顔を上げる。互いの視線が交差した瞬間。
「ありがとぉ」
一瞬の事だったが、確かに。いつもつまらなそうな、どこか意地悪な顔をしている如月が。初めて、俺に。
──屈託のない、笑顔を見せた。