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Re: 裏表Love Fight! +実話+ ( No.119 )
日時: 2010/06/11 14:09
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uRjlitq/)
参照: 眠れない午前二時 全てが急速に変わる(by.炉心融解

第七十五話『涙恋雨』


嫌だよ。


やめてよ。


あの子に、そんな笑顔見せないで。



**


次の日——。
今日も昼休みに補習が合った。


「……」


私は綾と一緒に、少し期待をしていた。
昨日みたいに前に来ないか。
昨日みたいに——……。


そう思った瞬間に、怜緒が来た。
しかし、怜緒は私たちの席とは違うほうに座った。


「……あ、怜緒だーっ」


怜緒が席についた瞬間、ドアから出てきた愛可が怜緒を見て叫んだ。
そして空いている怜緒の前の席に座った。


愛可って、頭いいから補習なんてないはずだよね?
なのに、なんで補習に来てるの——?


——その瞬間、脳裏に浮かんだこと。


    愛 可 は 怜 緒 目 当 て だ


だって、プリントなんてもらわないで怜緒の方を見ているもん。
怜緒と楽しそうに話していて——。
あぁ、なんかイライラしてきた!


「うざい!!」
「……ちょ、依麻どうした」


私は叫びながらプリントの問題を解いた。
綾は軽く驚きながらも、私を見ている。


「平安美人!! あの平安美人め!!」
「は? 依麻、それ誰?」
「愛可!! 鈴野愛可!!」
「なんで平安美人? 意味は?」
「現代のブス!!」


私が早口&小声で話すと、綾は軽く吹き出した。
そして「現代のブスって!」と笑っている。


その時、


「はぁ? ちげぇし」
「あはは、嘘だぁーっ」


怜緒の声が聞こえた。
そして、愛可の笑い声が——。


楽しそうな会話。
楽しそうなやりとり……。


ねぇ、そんな顔で楽しそうに笑わないで?
私の前で、そんな笑顔浮かべないでよ——……。


*放課後*


「宿泊学習のポスター完成させろ〜」


先生の号令で、全クラス動き出した。
そう、もうすぐ始まる宿泊学習の前日ポスターを作っているのだ。
放課後、皆で仲良く作業中——……ですが。


「暇だすに」


私は廊下で何も気にせずに散歩をしていた。
廊下は色々楽しいんだよ、うん。
散歩をナメちゃあかんで!


「……!」


その時、向こうから来た怜緒とすれ違った。
人がいっぱい居る為、少し窮屈。
そのお陰で、怜緒と顔が近くなる。


「……っ」


駄目だ、この心臓の状態ヤバイですよ!
そう思ってると怜緒は横目でこっちを見た。
ぎゃああ顔がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
私はあまりの衝撃で、思わず目を逸らしてしまった。


「……あ、姫吉ぃ〜」


人ごみの混雑が少し弱くなり、怜緒が私と少し離れたところで続海が怜緒に抱きついた。
……おえ、なんか変なシーン見ちゃった。


怜緒はそのまま続海をおんぶし、歩き始めた。
うひゃあ、怜緒が続海をおんぶ……。
なんかいい、かっこいい!!


「……やばい」


なんか私、どんどん変態キャラになってってない?
危ない危ない、変人通り越して変態になってしまう。


そう思った瞬間、怜緒が背中の続海を私に当ててきた。
私は驚いて、思わず目を見開いてしまった。


「次は女子だ〜」


背中の続海が怜緒に命令し、怜緒はゆっくり去っていった。
次は女子……って、私も女子なんですが。


「むぎぃ」


私は一人廊下で謎の言葉を発し、とりあえず教室へ戻った。


**


教室で作業中——。
廊下は相変わらず騒がしいです。
私は何回も廊下を覗いては、教室で作業をして……の繰り返しだった。


その際に窓に寄りかかっていた怜緒と目が合って、一人で仕事をしないで騒いでいた。


「ミカミ、シゴトシロヨー」
「そういうあんたこそ仕事しろ」
「ウルセェヨ」


同じ班のひょっとこは、他の人の筆箱をいじって遊んでいる。
私はしぶしぶ班のポスターの仕事に手をかけた。


その時、


「……オ、ヒメヨシー」


ひょっとこが呟いた。
私が振り返ってみれば、ドアの前には怜緒が。
私は思わず怜緒の顔をずっと見てしまった。


「……」


怜緒が無言で去っていき、私は我に帰った。
危ない、釘付けになっちゃいかんいかん……。


「ミカミ、ヒメヨシイタナーッ」
「うるさい」
「ヒメヨシヒメヨシヒメヨシレオーッフゥッ!! ヒメヨシエマッ」
「うざい! ……ちょいと散歩行ってくる」


一人で騒ぐひょっとこを置いて、廊下へ向かった。
ひょっとこの「マタサボルノカオマエー」という声がしたが、気のせいという事にしておこう。


*廊下*


「じゃあ俺、着替えてくるわ」


廊下に出ると、まず怜緒の声が聞こえた。
怜緒が方向転換する瞬間に、私は怜緒と軽く目が合った。


「……あれ、森野ジャージは?」


怜緒は近くに居た森野にそう聞いた。
どうやら、森野が怜緒のジャージを預かっていたらしい。


このとき、森野が最悪な一言を呟いた。


「愛可にあげた」
「はぁ?」


愛 可 に あ げ た
……怜緒のジャージを?
私がフリーズした間に、怜緒は走り出した。
そして私の横を通り過ぎ、三組へ向かった。


「ジャージ返して」
「森野が持ってるよぉ」
「え? 森野、返せ」


怜緒は森野のあとを追いかけた。
愛可の目は、怜緒をしっかりと追いかけている。
私はちょうど三組の近くに居たので、怜緒との距離は近かった。


すぐ横に居るのに、なんだか遠い存在。
こういう距離が、とてももどかしくて。


「おいおい、何やってんだよ〜」
「なんだよー」


怜緒は森野の背中を叩き、笑っている。
そして口調は、なんだか嬉しそうな口調。


「……」


なんだか、嫌な光景を見た。
気を紛らわす為に窓の外を見ると、雨が降っている。


こんな気持ちの放課後にはピッタリだ。
私はそう思いながら教室へ戻り、スクバを持ち玄関へ向かった。


「……冷たい」


外に出ると、大粒の雫が降っていた。
私は傘を持っていたが、差さずに歩いた。


「……」


なんだか、雨に打たれたい気分だった。
本当は雨で涙を誤魔化して、泣きたかったのかも知れない。


だけど、不思議と涙は出なかった。