コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.138 )
- 日時: 2010/06/13 00:55
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uRjlitq/)
- 参照: 「好き」と言われることが どんなに幸せか感じたい(by.NAO
第八十三話『キミヘノオモイ』
引っ張られる強い手は、
もう私の力じゃ振りほどけなくて。
「嫌だ!!」
「ほら、姫吉の部屋着いたよ!!」
「嫌だってば!!」
私は二人に引っ張られながら、部屋の前で叫ぶ。
その騒動に気づいた望は、怜緒の部屋から出てきた。
「……何やってんの」
「依麻が今から姫吉に告白するの!!」
「うわ、お前しつこい」
「違うんだってば……!!」
あぁもう、やだ!!
そう思ってると、私は無理矢理和美と舞夜に部屋の中へ入れられた。
怜緒の部屋は、私の部屋と同じく緑のカーテンで病院みたいなベッドがついていた。
そして怜緒は、左奥のベッドに座っている。
私と同じ所のベッド……って、そうじゃなくて!!
「もう、離して!」
「だめ、言うまで離さない」
「……っ」
「依麻まじでしつこい、帰れ」
「そうだ帰れ〜! 帰れ〜!!」
望の帰れの一言で、部屋の男子は一斉ブーイング。
怜緒にも「帰れ」と言われた気がするけど、もうそこらへんは覚えていない。
すると、部屋の奥から上半身裸の山吹櫂が出てきた。
「ひっ!?」
「何お前、姫吉に告るの?」
「……っお前は服着ろ!!」
私は目を逸らしながらそう叫んだ。
なんでこいつ服着てないんだ!!
そう思ってるうちに、マイペースな怜緒はペットボトルを片手にゴミ箱へと向かっていた。
「——あ、姫吉!! それ飲んだ?」
「……飲んだけど」
「じゃあ頂戴!! これを依麻に飲ませて間接キスだ!!」
「はぁぁ!?」
「今からこれ捨てるんだけど」
舞夜の一言で、私は絶叫。
そして怜緒も軽く笑いながら、そう呟いた。
舞夜は「捨ててもいいから頂戴」と怜緒にねだっている。
そして、舞夜と怜緒の軽い乱闘が始まった。
「——依麻っ! 姫吉君のペットボトルのラベル!!」「い、いらないっ!」
舞夜は、息を切らしながらラベルを突き出した。
私は手を横に振り全否定。
すると舞夜は、少し険しい顔をした。
「もらっておきなって! 姫吉の好きな人は沙羅なんだから!! ここできっぱり想いを告げて、もらうものもらって諦めようよ!!」
「え……」
怜緒は、やっぱり沙羅の事が好きなの——……?
とたんに私の胸が締め付けられた。
「いい加減、迷惑だと思うよ? 姫吉には姫吉でそれぞれの恋愛があるんだし!! だから、『今まで好きでした。これからは私も違う道へ進みます』って言って、お別れしよ?」
「……っ」
『お別れ』
その言葉が、私の胸をより一層苦しくさせた。
「……じゃあ、最後に豪快に抱きついちゃいな!!」
「え」
「姫吉に『バイバイ』って!! さぁ、思いっきり!!」
「やだ!!」
舞夜のどんどん進む話を、私は全否定した。
私が「やだ」と言うと、怜緒も「やだ」と呟いた。
その一言で、少しずつ私の胸が苦しくなり、涙が零れそうになるのがわかった。
そうだ、怜緒にも怜緒の恋愛がある——。
それを言われちゃ、私の恋はもうおしまいだ。
だから、一層涙が零れそうだ。
相手に、好きな人が居るからこそ。
「まぁ、姫吉に好きな人居るからな。……あ、言っとくけどお前じゃないから! 期待してたんですかぁ〜?」
「……っ、沙羅でしょ?」
「……とりあえず、お前ではないから」
私が少し期待してたの、望にはバレてたんだ。
でも私、バカでも知ってたよ。
この恋は実らないって——。
「……まぁとりあえず、部屋に入りなよ。ここでキッパリ決めちゃえ」
部屋に居た和希がそう呟いて、私を見る。
怜緒は、奥のベッドに座ったまま俯いている。
望はドアの前のベッドに座り、私の顔を見上げた。
「そうだ、一回部屋入れ」
「……」
望が小さく呟いた為、私は舞夜に引っ張られながらしぶしぶ部屋に入った。
しかしその瞬間、
「もう行くからぁ〜。待っててね?」
沙羅がドアから顔を覗かせた。
——交流時間に、沙羅と会う約束をしてたの?
私が居ない間に、
私が君を思っている間に——……。
君は、あの子と会う約束をしていたの?
「……っ」
「——ほら、依麻。早くしないと沙羅たち来ちゃう」
和美が、耳元で小さく呟いた。
私は何も言えず、ただ俯いていた。
「——怜緒〜」
数秒後、部屋にさくらと沙羅、そして数人の女子たちが入ってきた。
さくらと沙羅は、怜緒の横に座る。
怜緒は軽く笑いながら、沙羅の方を見つめている。
「——依麻、早く言わなきゃ……」
「……っ」
「依麻っ」
君の視界には、沙羅しか映ってないの?
私の事は、これっぽっちも見てくれないの?
「——交流時間終了!! 部屋に戻れ!」
廊下で先生の声がした。
それと同時に、私は我に帰る。
「……あぁ、もうダメだ。依麻、行くよ」
「……」
「依麻、早く姫吉に諦めるって言わないと!!」
「……っ」
「相手には、沙羅が居るんだよ? 依麻が頑張っても、無理なんだよ?」
諦めたくないのに、そんな事言いたくない。
私がいくら頑張っても、無駄かもしれない。
だけど、この一年間の想いを一言で終わりにしたくない。
「……っ私、は……」
思わず本音が零れそうになった。
「それでも私は怜緒が好き」だって。
でも、それを言ったら君はどんな顔をする?
沙羅が好きな君は、どんな気持ちになる?
「……わかった、よ。時間……チャンスがあったら、言う……」
君自身の恋を、犠牲にはしたくない。
君に迷惑はかけたくない。
私が君を指図する権利はないし、
君を私だけのものにすることも出来ない。
だから、私に決められた選択肢は諦めることしかない——……。
「……ごめ、ん」
私は小さく呟いて、その場から去った。
そして勢いよく自分の部屋へ戻り、ベッドに飛び込んだ。
「びっくりしたぁ……。依麻、どうしたの?」
「…………っ」
「ちょ、依麻!?」
私は、その場で涙を流した。
諦めたくない。
でも君は沙羅が好き。
私の想いは、君にとって迷惑。
邪魔な恋心——……。
でも私は、君が大好き。
本当は、そう伝えたい。
「……っ……、」
だけど、それは許されないことで。
途中で投げ出すことは簡単。
口で言うことも簡単なのに——……。
いつの間にか、君をこんなに好きになっていた。
君にこんなに溺れているなんて、自分でも思っていなかった。