コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.139 )
- 日時: 2010/06/13 01:42
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uRjlitq/)
- 参照: 「好き」と言われることが どんなに幸せか感じたい(by.NAO
第八十四話『徒花』
咲いても実を結ばない華だって、
自分でも、わかってた。
「……」
現在、午前三時——。
全く眠れない。
目を瞑ったら、怜緒と沙羅が笑っている光景が広がる。
部屋の皆は、もう寝てしまっている。
先生の見回りは厳しいし……。
散歩したくても出来ないから、残りの時間をどう潰そうか……。
そう思いながら、ゆっくりと起き上がった。
暗闇の中一人で居ると、どうしても君の姿が浮かんでしまう。
どうしよう、なんかまた泣きそうだ。
そう思ってると、
「……?」
なにやら、廊下から話し声が聞こえた。
先生の声? ……いや、違う。
美里奈の声だ。
「……」
私は耳を澄まして会話を聞く。
ていうか、普通に話し声が聴こえるって事は、もう先生居ないの?
そう思ってると、廊下から黒い影が見えた。
「あれ、誰か起きてない?」
「!?」
「——……誰?」
「へ!? ……依麻、」
聞き覚えのある声。
そう——、森野康祐の声。
そしてその次に「おー、三上チャンこんな時間に起きてちゃダメですよっ」と言う赤アリの声がした。
「赤アリと森野……」
「何してんだよお前」
「いや、ちょっと考え事を……。森野たちは?」
「俺達は、散歩」
「へ? ……先生達は?」
「もう先生たち居ないよ。皆寝てる。だから俺達、廊下で歩き放題ってわけ」
「嘘!? マジで!?」
私はベッドから降り、森野と赤アリの方へ向かった。
廊下を見ると、本当に誰も居ない。
ただ真っ暗な廊下が続いていた。
「本当だ……。誰も居ない」
「だろ? ま、俺達は探検に行くってわけだな」
「へぇ……」
「んじゃ」
森野は手をひらりと返し、その場から去っていった。
それと同時に、亜美奈の声がした。
「……依麻?」
「亜美奈! ……起きたの?」
「うん。……何してたの?」
「今、先生達居ないんだって! 好き勝手し放題!」
「え? マジ!?」
亜美奈もベッドから飛び起き、私たちは廊下へ出た。
時計を見れば、午前三時九分。
おぉぉ、これはラッキー!!
そう思っていると、騒ぎを聞きつけた人たちが一斉に起きだした。
暗かった廊下が明るくなり、ほぼ学年全員が廊下を歩いていた。
「皆、なんだかんだ言って自由人だねぇ」
「確かに」
私と亜美奈は、小さく呟いた。
するとその瞬間、一人の女子が大声で叫び始めた。
「……やばっ! 今の声で先生起きたかも!!」
「え、マジで!?」
誰か一人の声と同時に、皆一斉に走り出した。
私も慌てて自分の部屋に戻り、ベッドへダイブした。
「……あれ、亜美奈……っ」
さっきまで隣にいたはずの、亜美奈が居ない。
どうやら亜美奈は逃げ遅れたようだ。
「……やばいな、これ」
私は小さく呟きながら、枕に顔を埋めた。
とりあえず寝たフリをしなきゃ——……。
そう思いながら、毛布を被せて寝たフリをして廊下を観察していた。
**
「——……」
午前四時半。
いつまで経っても亜美奈が帰ってこない。
そして、私は全く眠れない。
「……先生に捕まったのかな……」
私は小さくため息をついた。
実はさっき、四時ごろに先生に呼ばれて「廊下出たの?」なんて聞かれたけど……。
なんとか逃げ切れた。
——なんだか私だけが逃げ切れたっていうのも、罪悪感が……。
そう思ってると、部屋に先生が入ってきた。
私はとっさに寝たフリをし、薄く目を開けて様子を見ていた。
すると、
「三上、ちょっと来なさい」
強い口調で先生が言った。
私は軽く肩を揺らし、ゆっくりと起き上がる。
「……アンタ、廊下歩いた?」
「……散歩がてらに、まぁ」
「じゃあ他の部屋に入った?」
「まぁ、覗き……ましたね」
私が小さく呟くと、先生は「着いてきなさい」と冷たく言った。
一気に背筋が凍りつきそうになったけど、私はゆっくりと先生の後をついていった。
**
「——ここで正座をしなさい」
着いた場所は、小さな部屋。
そこには沢山の生徒。
そして、先生全員が居た。
「……お前らは夜中に歩き出すとはどういう事だ」
先生の長いお説教が始まった。
どうやら、私の前に捕まっていた亜美奈たちは、もう一時間以上正座をしているみたいだ。
「……っ」
私の前の人や、横の人は——。
皆足が痺れたのか、小さく動き始めている。
バレたのが遅くてよかった……。
そう心の中で小さく呟いた。
「——……もう夜が明ける。この続きは後で話すからな」
先生の長いお説教が終わったのは、午前五時すぎ。
私は約三十分間の正座をした。
足が軽く痺れ気味だったが、他の人たちよりはまだ軽いほうだった。
私の前に居た人たちは、皆立ったと同時に転んでいる。
そして皆一気に歳をとったような歩き方をしていた。
あぁ、お気の毒に……。
「…………」
もう五時だし、寝てる時間はないな。
まぁ寝れないんだけどさ……。
まぁいいや、部屋帰ってのんびりするか。
そう思いながら、部屋へ向かった。
**
「……依麻、ごめんね。名前出しちゃって」
「あ、いいよいいよ」
部屋に着くと、亜美奈が謝ってきた。
まぁ、元は私が亜美奈を誘ったようなもんだし……。
いいんだ、うん。
でも結局、私は反省文一枚と家庭連絡をされることになった。
他のバレた人々……三十人もその二つをされることになった。
本当はほぼ全員が歩いてたのに。
逃れた人たち、ラッキーですなぁ……。
私はそう思いながら、ベッドに横になった。