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- Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.189 )
- 日時: 2010/06/19 19:47
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uRjlitq/)
- 参照: 塚淌果淦弊折斌淦! 岶探牢弊折斌淦!♪(by.ひょっとこ←
第九十四話『少しだけ、』
こんな辛い状況でも、
気まずくても、
最悪な状態でも——……。
怜緒と目が合えた。
それだけで、まだ私は頑張れるって思うんだ。
**
「……今日は塾か……」
私は家の中で、大きくため息をついた。
怜緒には、会いたくないな——……。
なんか、今顔見ちゃうと泣いちゃうかもしれない。
そう思いながら、私は乱暴に目頭を拭った。
それと同時に、チャイムが鳴り響いた。
インターホンに映るのは、可愛らしい恵の姿。
「あぁ、恵……。今から行くね」
「わかったよ、下で待ってる」
インターホン越しに恵と会話をし、私は深いため息をつきながら家を出た。
*塾*
「おう、依麻! 遅ぇーぞ!!」
「……う、続海……」
会いたくない人物ベスト四に入る奴——。
畑島続海。
なんでこいつが、私の前の席なんだよ!!
「あ、依麻ちゃんと続海君、やっぱり友達なの?」
「「いいえ、違います」」
「そんな声揃わなくて言わなくても……」
先生は軽く苦笑いをした。
続海は「こいつ知らない、変な人」と呟く。
私は小さく舌打ちをし、カバンを置いてノートを出した。
その際、横にかかってある次にこの席に座る人の名前が書いてある紙が、視界に入った。
「……!?」
私は、絶句した。
そう、その紙に書いてあった名前は——……。
姫吉 怜緒
「あぁぁ!?」
なんでこう、タイミング悪いの!?
なんで私の座ってる席に、後から怜緒が来るの!?
あぁぁもう、タイミング悪すぎ!!
「……はぁ」
私は更に深いため息をつき、ノートを開いた。
**
「依麻」
塾終了後。
前の席に居た続海が、私を見下ろした。
「何? 続海」
「姫吉、まだ来てないね」
「……っ! む、向こうに嫌われてるからいいの!!」
私は続海に向かって、そう叫んだ。
なんか会話が噛み合ってないぞ……!?
そう思ってると、続海は軽く笑って去っていった。
「あぁ、むかつく……」
何が悲しゅうてこんな思いしなきゃならないんだ!?
私はバックを乱暴に掴んだ。
「え、依麻……。バック壊れるよ?」
「いいのっ!!」
恵のいう事なんか気にせず、私は乱暴にバックを振り回した。
あぁ、ストレスが溜まる!!
その時、
「……依麻、後ろ!」
「え? ——……っ!!」
恵に言われ、後ろを振り返ると——。
怜緒と望が居た。
危なくバックが二人に当たりそうになる所だったみたいで、二人は軽く驚いた顔をしている。
しかし、すぐに普通の顔に戻り「さぁ、俺の今日の部活部屋はどこかな?」と謎な会話をし始めた。
「俺ここ〜」
「望そこ? 俺の席は……。——……」
望の席は、どうやらさっき居た続海の席のようだ。
怜緒は、ただ真っ直ぐと私の居た席を見つめる。
見れば、机の上に私のシャーペンが置いてあった。
私は慌ててシャーペンを取り、急いでバックに詰めた。
しかし怜緒は、まだ無言で席を見つめている。
そして、一言。
「……俺の席、この後ろだよな!?」
「はぁ? ちげぇし、お前ここだろー!!」
「えー」
怜緒が指差したのは、恵が座っていた席。
明らかに私が座っていた席を、拒絶している。
望に指摘されても、怜緒は顔をしかめている。
どんだけ、私が座ってた席が嫌なんだよっ!!!
「……っ恵、行こっ!!」
「あ、うん……」
「——あー、三上ちゃんに綿貫ちゃん。ちょっときてもらえる?」
ムカついたので、恵を引っ張り帰ろうとした瞬間、塾長に呼び出された。
そしてそのまま、塾長部屋に連行される。
「どう? テストまでに理解できそう?」
「はぁ……なんとか」
「よければさ、土曜日に塾空いてるんだけど……。来ないかい?」
「え、いいんですか?」
私と恵は、顔を見合わせる。
土曜日入れたら、三日連続で塾になるけど……。
まぁいっか、テストで少しでもいい点を取る為!!
「「行きます!」」
「じゃあ、今日お母さんに電話するね。確認とるから」
「「はい」」
「あ、それともう一つ——」
塾長がまた説明をし始めた為、私たちは聞く。
すると、後ろから気配を感じたので私は振り向いた。
見れば、怜緒と望が居る。
「うぇーいっ」
二人は私がこっちを見た為、びっくりする。
なんだよ、そのうぇーいって。
てか、怜緒の右足が塾長部屋に入ってますよー。
そう思って軽く横目で見てると、二人は去っていった。
私は軽く鼻で笑い、再び前を向いて塾長の話を聞く。
「——……ってわけだから。これも、電話でお母さんに説明するね」
塾長の説明が終わり、私たちは後ろを向いた。
すると、また望と怜緒が居た。
私と怜緒は、軽く目が合う。
「…………」
しかしそれも数秒で、怜緒から目を逸らして去っていった。
それでも、私にとって嬉しかった。
もう二度と、目は合わないって思ってた。
だって、嫌われてるから——。
もう二度と、私の近くに来ないかと思ってた。
冷たい顔で。
冷たい瞳で——……。
私を、見ると思ったのに。
「——……」
……大丈夫。
私はまだ、絶望的じゃない。
もう少しだけ、本当にもう少しだけ——。
本当に諦めるまで、もう少し頑張ってみようかな?