コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.220 )
- 日時: 2010/06/23 23:21
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uRjlitq/)
- 参照: そんなひどい事は聞きたくなかった by.カノンロック-失恋疾走曲-
第九十八話『叶無恋ノ葉』
馬鹿。
お願いだから、
これ以上、期待させないでよ——。
*塾終了*
「……げ、帰りまで錬太郎と一緒かい……」
現在の時刻、午後の七時半過ぎ。
辺りはすっかり真っ暗です。
私は階段を下りながら、前に居た錬太郎に向かって小さく呟いた。
「うるせぇな、バカ依麻のくせに……、——……あ」
「あ? ……あ」
「うわーっ!!! ストーカーだ!!」
嫌 な 奴 に 会 っ て し ま っ た
そう、それはおなじみ糞どんぐり。
三上望。
自転車置き場にたむろってるソイツは、怜緒と多数の男子と固まっている。
「姫吉のストーカーが来たぞー!」
はいはい、うるさいですよ、近所迷惑ですよ。
普通で行けば世の中、微笑ましい食卓の時間ですよ?
変な声で叫ぶのはやめなさい、どんぐりの笠割るぞ。
「ストーカー、ストーカー! ……姫吉、ストーカーから逃げるぞ!!」
望はひたすら叫び、怜緒を引っ張って塾の中へと入っていった。
私は俯いたまま、怒りを抑えていた。
アイツ一人だけだったら……今頃……。
ふふふ、あはははのはっと。
さぁ、帰ろう。
そう思いながら自転車の鍵を出した瞬間、
「……やっぱり、まだ姫吉の事好きなんだ?」
「はぁ!?」
錬太郎が、横目でそう呟いた。
私は思わず大げさに反応してしまった。
「な、なんで」
「危ね、今自転車に家の鍵差し込む所だった」
「そのまま抜けなくなればよかったのにね」
私は横目で軽い嫌味を言った。
錬太郎は軽く笑いながら「意味わかんねー」と去っていった。
「……私たちも帰るか」
「そうだね」
私と恵も錬太郎と方向が同じなので、嫌でも後ろをついていかなくちゃいけない。
あぁ、なんか望の顔思い出した。
なんかどんどん腹が立ってきたぞ……!?
「っんだーっ!! 腹立つ!!」
「ちょ、依麻……」
近所迷惑ですね、私。
すいません、この辺の微笑ましい食事中の皆様。
私がひたすらイライラしていると、ちょうど信号が赤になり、私たちは止まる。
同じく前に居た錬太郎も止まり、私を見てきた。
「姫吉のこと好きなの?」
「うっさい」
「姫吉のストーカー」
「……っうるさいし!! つかいつからそんな命名されて——……っ!!!」
「……」
「ちょっと、聞いてんの!?」
なんだか望へのイライラを、錬太郎に八つ当たりしてしまっている。
駄目だな、私——。
そう思ってると、錬太郎は軽く俯いた。
「……俺、今悲しいんだ……。三日で彼女と別れて……」
「っ! ……あ、あぁ……。……ご、ごめん」
そうだよ、錬太郎はやっと大好きな子と付き合ったのだが——。
たったの三日で別れてしまったのだ。
私の馬鹿。
人の八つ当たりしてどうすんの。
そう思いながら自分を叱っていると、俯いてたレン太郎の顔が上がった。
「……それで、姫吉の事好きなの?」
「……」
またその質問?
そう思いながら黙っていると、
「姫吉が、お前のこと好きなんだって」
「——は?」
信号が、ちょうど青に点滅した。
それと同時に錬太郎は前を向き、自転車を漕いだ。
私は数秒固まりながら、すぐ錬太郎を追いかけた。
すると、また信号に引っかかった。
「——ね、ねぇ! さっきの、嘘でしょ?」
「……本当だったら、どうする?」
錬太郎は、軽く笑みを浮かべる。
明るい街灯が、錬太郎の姿を照らす。
夜の温い風が、私の髪を揺らした。
「……絶対嘘でしょ」
「本当だったらどうする?」
錬太郎が鼻で笑うと同時に、信号は青に点滅した。
そして曲がり道で、錬太郎と私たちは別れる。
「……っ」
『姫吉がお前のこと好きなんだって』
その言葉だけが、頭の中を巡っていた。
嘘だ。
嘘に決まってる。
嘘だってわかってるのに——。
「…………」
この気持ちは、何?
心臓が、苦しいよ。
私は一体、どれを信じればいい?
何を信じればいいの?
期待しても、全て私の勘違いになる。
偶然は結局偶然。
私の事嫌いなら、これ以上期待させないで。
ねぇ、変に優しくしないで?
私、馬鹿だから単純なの。
本当、自分が嫌になるよ。
「……駄目だ」
また、君に恋をしちゃってる。
叶わない、恋なのに——……。