コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.279 )
- 日時: 2010/07/21 20:45
- 名前: 在処 ◆VRtMSlYWsU (ID: MT1OWC7F)
第百十一話『ユニフォーム』
*次の日*
今日は中体連壮行会の日。
中体連壮行会とは、中体連に出る人が挨拶をする——みたいな会だ。
まぁ、そのまんまですね。
「選手は今から着替えろ〜」
先生の号令で、中体連に出る人は廊下へ出た。
一気に私含め教室に居る人は少なくなる。
いち、に〜…………十五人しか居ないじゃん!
半分以上いないよ、うひゃあ……。
「みんなすごいね……」
「だね、依麻……。依麻はなんか部活ないの?」
「元テニス部でごわす」
「マジ? 私、元バスケ部!!」
「おひょーっ、暇人同盟や〜」
私は亜美奈と教室で盛り上がる。
玲於奈も流佳も……みんな中体連に出るんだ。
勇ましい……というか、うらやましい。
「へんじ〜んっ! 私も暇人だよー」
「おぉぉ、陽乃ちゃんっ!!」
バレー部所属、前沢陽乃ちゃん。
陽乃ちゃんは、私を「変人」や「変人さん」と呼ぶ。
前同じクラスだった和美いわく、ドSっ子らしい。
「本当は私も出れるはずだったんだけど……。怪我で出れなくなった」
「まじかぁ……。陽乃、バレー上手いもんね」
「いやいや。——みっちゃんも、宗も……。この辺の周り、皆中体連だね」
陽乃ちゃんは私の後ろの後ろの席。
なので陽乃ちゃんの周りはもちろん、私の周りもガラ空きである。
「——……暇人同盟組んだってことで、廊下にでも出ます?」
「そうだね! 皆着替えたのかな〜。——ほら、行くよ変人」
「ぎゃふん」
陽乃ちゃんに引っ張られ、先頭に歩く亜美奈の後を着いていった。
*廊下*
「……うひゃあ、皆それぞれのユニホォームに着替えてる……」
廊下に出ると、制服以外の鮮やかな色が広がった。
あれはバド部、あれは剣道部……あれは——。
私たち暇人同盟は、横切っていく部活のユニフォームを眺めていた。
そのとき、陽乃ちゃんが遠くを指差した。
「——見て、サッカー部のユニフォームだよっ」
「!?」
サッカー部のユニフォーム……!?
私は一気に胸が高まる。
そして、ゆっくりと振り返ると——。
そこには、望と怜緒の姿があった。
「……っ」
「サッカー部、鮮やかだねぇ」
「うんうん」
陽乃ちゃんと亜美奈はのんきに話す。
私は横で、目を見開いて二人を眺めていた。
望はオレンジ色の結構かっこいいユニフォームを着ている。
そして怜緒は——。
長袖長ズボンの、黄色いピ○チュウみたいな格好をしていた。
「ぅぷっ……」
思わず小さく吹いてしまった。
ユニホォームのおかげで、普段より何割かマシになっている望だが——。
怜緒は、可愛くてなんだかおかしかった。
「望ーっ! 似合ってるよ〜」
「お、おぅ……っ」
次第にこちらに距離を縮めてく望に、四組の女子——……まぁ、不良グループの女子がそう言った。
望は軽く笑いながら照れていた。
肌が黒いから、オレンジが似合うだけだよ、うん。
そう思ってると、そのまま望とすれ違った。
その後に怜緒が——。
私寸前の後ろを、ゆっくり通っていった。
「……」
怜緒の後姿を見ると、ますますピ○チュウみたい。
何故かわからないけど、なんだか切なくなった。
フラれてて気まずいけど、姿を見るのは当たり前。
少しのハプニングは、日常茶飯事。
辛かった日も、あったけど——。
——ねぇ、怜緒……。
想ってるのは、私だけだと思うけど。
思えば、この毎日が些細な幸せの一つだったね。