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Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.301 )
日時: 2011/01/23 19:48
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: h7rqA5xU)
参照: すれ違いは結局運命で すべては筋書き通りだって(by.Calc.

第百十四話『最後の強がり』


バイバイと君に言ったのは、これが最初で最後。


「……っ」


私は慌てて受話器を置いた。
——これで、よかった。


これでもう、いいんだ。


『大丈夫だよ』


君の声が、やけに大きく耳に響いている。
今まで聞いた君の声の中で、一番優しい声で。
泣きたくなるくらい、好きだった声で。
愛しいくらい、好きだった声で。


『頑張って』


五月の始まり。
君に恋をしたあの日。


『面白い』


隣の席の時。
私の変な発言に、君は笑いながら言ってくれた。


『依麻』


初めて、私の名前を呼んだ日。


色んな君との思い出が、頭の中によぎってはすぐに消えた。




**


「——依麻、どこ行ってたの?」
「……あー、ちょいと散歩へ」


施設に戻ると、お母さんが小走りで私に駆け寄ってきた。
玉砕しに言ってきた、なんか言えない。
私はお母さんに見抜かれないように、笑顔を作った。


「転校先の学校決めたよ」
「え?」
「えっとね、光葉中学校ってとこなんだけど」
「みつは?」


なんか拍子抜けた声を出してしまった。
光葉中学校……聞いたことない。


「とりあえず、転校する前に挨拶くらいはしなきゃいけないから、終業式の日に学校行こうか」
「え」


思わず固まってしまった。
学校……。
私、ついさっき別れを告げてきたとこ……なんだけどな。


「友達にも会いたいよね?」
「会いたい、には会いたいけど——」
「じゃあ終業式の日、学校行こうか。私も先生にちゃんと話するから」
「わかっ、た」


まぁ、いいか。
今度こそ、本当に今度こそ!!
さよならなんだから——。


「というかあんた、お昼食べてないでしょ? 食べてきなさい」
「あ、そういえば。じゃあ行ってくるわ」
「はいよ」


私は思い出したかのように、食堂へ向かった。
途中で怜緒の顔が思い浮かんだけど、無理矢理頭の中から消した。