コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.314 )
- 日時: 2011/01/25 17:42
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: A2yHVZ/p)
- 参照: すれ違いは結局運命で すべては筋書き通りだって(by.Calc.
第百十五話『溶けゆく言葉』
あの瞳で、私の顔を覗き込んで。
「大丈夫かよ」
「早くこっちに来い」
そんな風に、君は優しく笑った。
その笑顔で、闇から私を解放してくれる。
「——……」
そんな儚く、切ない夢を見た。
「——あれ、メール来てる」
学校へ行く前日の日。
近くの打ち上げ花火大会に向かうとき、携帯を見ると一通のメールが来ていた。
「……駿二?」
駿二からだった。
こいつからメールが来るなんて、珍しすぎる。
驚きながらも受信ボックスを開くと、
「今からここに電話しろ?」
その一言だけ書いてあった。
私は疑問を抱きながら、書いてある電話番号にしぶしぶ電話をすると、駿二のでかい声が響いた。
「もしもし? 依麻?」
「そうだけど、どうしたの?」
「今どこにいんの」
「え?」
駿二の突然の質問に、私は言葉を詰まらせた。
場所は、言えない。
刹那中学校の人間に、場所は言うなと母と約束した。
「事情があって、それは言えないんだけど」
「……色々先生に聞いたんだけどさ。大丈夫かよ」
「……まぁ、ぼちぼち?」
「みんな心配してっぞ。特に琉佳とか、やばいくらい心配してる」
琉佳——。
そうだよね、琉佳は優しい。
私が何も言わないで学校に行ってなくても、ずっと心配してくれてたんだ。
「琉佳に迷惑かけちゃったね」
「おう。まじお前メールしてやりな」
「うん。わかった」
「つかお前、いつ学校来んの? もう何か月も来てねぇじゃん。明日終業式だし」
「あぁ……。明日学校行くよ。ていうか、私転校するの。だから明日で最後」
「え?」
駿二は間抜けな声を出した。
もう明日で刹那中学校も最後ってわけで。
言っちゃっていいよね、明日どうせ皆に知らせるんだし。
「それ本気で言ってんの?」
「本気」
「まじかよ……。なんかお前、可哀想になってきた」
「何それ、どういう意味」
「同情の意味で。じゃあ明日、学校楽しみだろ?」
「まぁ……うん」
なんか行きづらいけど。
琉佳とかに会えるし、行きたいかな。
「姫吉のこと、まだ諦めてないんだろ?」
「……は? なんで」
突然怜緒の名前を出されたもんで。
ちょっと無愛想な対応になってしまった。
「裕士が言ってた」
「……」
ひょっとこめ。
私は心の中で小さく溜息をつき、一息呼吸を置いて口を開いた。
「……諦めたよ」
「早」
そうだ、私は諦めた。
いや、諦める。
今は忘れられなくても、転校先で新しい恋が出来るはず。
そう、言い聞かせた。
「……まぁ、そういうことだから」
「ん。早く学校来いよ」
「……わかった。なんかわざわざありがとうね」
「なんも。じゃ」
電話が切れ、私はその場に立ち尽くした。
やばい、なんか泣きそうだ。
こんなことで私、泣けちゃうようになってたんだ。
『大丈夫かよ』
『早く学校来いよ』
なんで君に言ってほしかった言葉を、この人が言ってくれるんだろう。
憎くて仕方がなかった、駿二が——。
戻っちゃいけないのに。
忘れかけてた想いが、また鮮明に思い出してしまうよ。
——心が、押しつぶされそう。
だけど。
「……あ、花火……」
夏の夜空。
花火が夜空に力強く溶け込んだ瞬間。
私は瞳を閉じた。
もう現実から逃げ出したくて。
もう何もかも、苦しい。
私は、どうすればいいんだろう……。
これ以上、もがいて何になる?
恋の華は、散ってしまったのに。
もう戻れないのに。
何も感じなかったのに。
今更になって、ほら。
後悔してる自分がいる。