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Re: 嫌いに、なれたら +実話+ ( No.319 )
日時: 2011/01/25 19:36
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: A2yHVZ/p)
参照: あんだーゆあふぃーと(何 ……これってどういう意味?←

第百一六話『別れ』


次の日——。
一学期の終業式の日。
お母さんは職員室に行って話を澄まし、私は数か月ぶりに学校へ行った。


「依麻、久しぶり!!」
「大丈夫?」


琉佳や玲於奈など、優しい女子たちは私に駆け寄ってくれた。
久しぶりの友達。
せっかく、仲良くなれそうな友達ができたのに。
今日で、お別れ——。


「——はい、じゃあ席ついて」


友達と話していると担任がやってきて、皆席についた。
いよいよか……。
私は少し息を潜め、先生を見た。


「今日は、お知らせがあります」


先生と目があい、合図をされると同時に私は立ち上がった。
皆の視線が集まり、私は前に出る。


「三上依麻さんが、今日をもって転校することになりました」


先生がそう告げると、教室はざわつき始めた。
もう既に知ってる人たちは、ただ黙って私の方を見ていた。


「せんせー、お別れ会かなんかしないのー?」


そう呟いたのは、以外にも沙理だった。
先生は小さく唸り、


「急だからな……。何も予定してなかったから、悪いけど出来ないかな。でも帰りの会で、何か企画しよう」


と言った。
企画……かぁ……。
転校なんて一生しないと思ってたから、なんかドキドキする。


「じゃあ、今から写真とろう。皆机下げて集まって」
「はーい」


先生がそう言い、皆は立ち上がって机を下げた。
女子たちは、私の周りに集まる。


「依麻と写真撮るのも、最後だね」
「寂しくなるな……」


琉佳と玲於奈は、俯いてそう言った。
そんな二人を見て心が痛んだけど、私はなるべく笑顔を作った。


「じゃあ依麻を真ん中にして〜。——駿二と続海、変顔するなー……よし、じゃあ行くぞ〜はいチーズ!」


シャッター音が鳴り響き、最後の写真を撮り終えた。


**


「——なんで依麻いるの」


水飲み場へ来たとき。
野沢流に声を掛けられた。
なんか、流が好きだったころが懐かしいなぁ……。
私はそう思いながら、流の方を見た。


「……っ!?」


その時、怜緒と目が合った。
な、なんで怜緒と流が一緒にいるんだ!?
ていうか、よく見れば望までいるし。


「お前本当なんでいるのよ」
「転校したんじゃなかったの?」
「きょ、今日でもう最後だし!!」


私はそう言い放ち、教室に戻った。
まだ転校してなくて悪かったな!
本当に、今日で——。


怜緒に会うのも、最後なんだから。





「——じゃあ、帰りの会を始めるぞ〜」


今日一日は、なんだか早く感じた。
もう帰りの会か……。
私は小さく俯いた。


「でも今日は帰りの会じゃなく……。依麻、前に来い」
「あ、はい」


私はまた前に呼ばれ、持ってきた皆に配るノートを持った。
それを配り終えると、学級代表の玲於奈と凛が出てきた。


「ぱ〜んぱ〜んぱぱ〜んぱ〜んぱかぱかぱんぱんぱん〜」


凛が口でBGMを歌い、玲於奈は苦笑いをしながら私に近づいた。
そして、カラフルに装飾された色紙を渡す。


「依麻、転校しても頑張って下さい」
「ありがとう……玲於奈」


やばい、涙腺が。
なんてこったい、私を泣かせる気か。


「男子からも! 凛早く!!」
「ぱ〜んぱ〜んぱぱ〜んぱ
「もうそれいいから!」


玲於奈に鋭いツッコミをされ、凛は肩をすくめて私を見た。
そして、もう一枚色紙を渡してくれた。
やばい、涙腺やばいって。


「じゃあ依麻から一言!!」
「え、ここで私?」


なぜか駿二が乱入してきて、私は焦る。
お陰で泣きそうになる気持ちは引っ込んだものの、今度は最後の挨拶の言葉を考えるので一生懸命だった。
な、何を言えばいいんだ。


「……えっと、今までありがとうございました」
「……それだけかい」
「え」


続海のツッコミが入り、クラスは笑いに包まれた。
この光景も、最後。
ほんの数か月しか過ごせなかったクラスだけど、なんだかんだよかったかも。
最後の最後に、気づくなんて。


「じゃあ、起立! 依麻、元気でな! さようなら!!」


先生が皆を立たせ、挨拶をした。
皆も挨拶をし、机を下げ始める。
——本当に、終わっちゃった……。


「依麻!!」


教室を出ようとすると、玲於奈と琉佳が抱き着いてきた。
私は驚きながら、二人を見る。


「依麻、絶対また会おうね!?」
「うん、うん!! 絶対会おう? 絶対遊びに来るから!!」


私は笑顔を浮かべた。
二人も笑顔を浮かべる。
そして約束をし、私たちは別れた。


「——依麻!!」


今度は誰だ?
振り向くと、綾が猛スピードで走っていた。
そして思い切り私に抱き着く。


「ぐおうっ」
「馬鹿依麻っ!! 絶対遊びに来い!!」
「うん! 絶対約束する」
「依麻大好きだからね!!」


綾が私を抱きしめたまま、そう言った。
あぁ、なんだ。
私、ちゃんと友達居たんだよね。
私は泣きそうになりながら、綾を抱きしめ返した。


「私も、綾が大好き」


綾と喧嘩もしたけど。
私がクラスで一人だったとき、傍にいてくれて。
一番身近で、恋愛を応援してくれてた。
ちょっぴり豪快で、強気な綾。
そんな綾が、大好きだよ。


「うん。……じゃあ、ね」


綾は満足そうに頷いた後、小さく呟いて私から離れた。
私も小さく頷き、最後に綾とハイタッチして別れた。


この水飲み場で、私と怜緒は出会って。
この窓の前で、私は怜緒に振られて。
クラス替えして、怜緒に会いに行くために何度も廊下に出た。
廊下には、いろいろ思い出が詰まっている。
私は思い出を噛み締めながら、廊下を歩いた。


「——おい、依麻」


城沢に声をかけられた。
私は少し驚きながらも振り返り、城沢を見た。


「お前転校すんの?」
「うん」


私が小さく頷くと、城沢は「まじか」と呟いて教室を見た。
そして、私を見てニヤリと笑みを浮かべた。


「教室に姫吉いるけど。呼ぶ?」


怜緒——。
怜緒、怜緒、怜緒。
頭の中には、君の笑顔が浮かぶ。


「……いや、呼ばなくていいよ」
「最後の挨拶、しなくていいの?」


最後の挨拶なんてしたら。
前に進めなくなる。
今度こそ泣いてしまう。


「うん。……いいの」


私は城沢にそう言い放ち、玄関へ向かった。
もう、戻れない。
振り返るわけにはいかないから。
前に、進まなきゃ。




さようなら、怜緒。
さようなら、皆——。