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Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.151 )
日時: 2010/06/05 18:04
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/



 第66話



 “さ よ な ら”
 それは、信じてた君に、言われた一言。
 今までは全てが幻。
 幻覚だった、君なんて存在しないよ——

 全部私の、甘い夢だった。
 この声は幻聴。
 そして今、ゆっくりと夢から醒めた——


 神様、これ以上私から幸せを奪わないで!



**



 ぴんぽーんと、何の変哲もない、ただの電子音が、三井家に響き渡る。
 でもこの電子音が、私にしては、自分の心の悲鳴に思えた。……そんなはずないのに。
 しばらくして、辰雅が明るい笑顔を振りまいて、ドアを開けた。


 「いゃっほぉー! ……ん? なんだ、香織姉か」
 「……孝文、呼んでくれる?」

 いつもなら、ノリよく返事するけど、今はそんな気力は皆無。
 辰雅は、きょとんとした顔で「なんで?」と言い返す。

 「いいから、早く呼べ」

 私は、いつもとは違う低めの声で、無表情で、冷たくそう言い放った。
 辰雅は、途端に笑顔が消え「ん……」と、だけいうと、家の中にはいっていった。


 そして——しばらくして、孝文がでてきた。
 何も知らない、いたいけな姿で……ね?
 
 私は、普段絶対こんなことしないけど、何故か孝文に近づいて、ぎゅっと強く抱きしめた。
 ……自分でもわからない、勝手に体が動く、なんで——?


 「ちょ、おま……落ち着け」
 「…………」


 そして、私は……孝文の唇に……——
 しようとおもったけど、それは……できなかった。


 その前に、孝文が思いっきり私を突き放したから。
 あの頃の優しさなんてない、女の子だからっていう、配慮もなく、力強く突き飛ばしたから。
 私はそのまま、1mくらい飛ばされると、電柱柱に体をぶつけて、我に返った。



 「……あのさ、香織」
 「何」


 孝文はなにかいいにくそうだったけど、やがて、口を開いた。





 「別れよう、さよなら」
 「……え? なんで、どうして!?」


 私は思わず、孝文にしがみつく。



 「……お前が本当に好きなのは、俺じゃないし、それに俺も——」
 「じゃあ、なんで……? なんで好きとかいったの!? へんな期待させないでよ!」


 私は、近所中に響く声で怒鳴った。そのあと、重い沈黙が続いた。
 しばらくだまったあと「じゃあ」と、私はいって、家に帰ることにした。



 「馬鹿野朗……」



 静かな住宅街を照らす、夕日に向かって、私は1人……呟いた。