コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.157 )
日時: 2010/06/07 17:28
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/



 第67話



 「…………」



 その日の夜、私は今日起きたことを忘れたくて、何を思ったのか、自分の部屋のベランダにいた。
 今日は晴れてたから——夜空はすごく綺麗だった。
 そして、蒸し暑い。もうすぐ、梅雨にはいるころだからなあ……。
 

 このまま、雨と共に、つらかったこととか、溶けて消えてしまえばいいのに——


 そのときだった。


 「おーい」


 どこからか、低くて……聞き覚えのある、声が聞こえてきた。私は、吃驚して、思わずきょろきょろ辺りを見回す。
 そして、私の視線は、外にいる優志のところでとまった。


 「よっ!」
 「あ……よ、よっ……」


 なんだかよくわからないけど、優志がフレンドリーにしてきたので、とりあえず返事した。
 私は、自分の部屋のガラス戸を開けて、時計を確認した。


 午前1時——


 これはさすがに夜更かししすぎ……。
 さっさと、寝たほうがいいかも……? まあ無理もないや、さっきお風呂からあがったばっかだし。
 

 「あの、優志! なんでこんな時間に?」
 「……あ、いや、その、ちょっと、散歩……」
 「えっ!?」


 散歩て……夜中に散歩て……寝ぼけて散歩する、ジャ○アンみたいじゃないか!
 ……えとあれは確か、ドラ○もんが元の世界へ帰る話で……まあいいや、あとで漫画で確認しよう。
 今は、優志がなんで外にいるのか、だ。


 「……さすがに男の子でも、夜中に散歩するのはやばくない!?」
 「……やばいのはお前のほうだよ」


 はっ!? な、なに……。といおうとして、私は大きくくしゃみをしてしまった。
 うわ……ってかなんか、寒くなってきたし……。
 その時はじめて、自分の今の格好に気付いた。

 お風呂にあがってすぐに、ベランダにきたのだ。
 髪の毛はびしょ濡れで、しかも……。



 上半身裸。


 最初は、上半身まで隠してタオル巻いてたのに、いつのまにか、ずれてきたらしい。
 ……ん? じゃあ、上半身裸……を……みら、れ、た……?


 「ぎゃあああああああっ!!」
 「ちょ……夜中夜中! 叫ぶなっ」
 「うぎょおおああああ」


 私は奇声をあげて、慌ててタオルを上のほうまであげた。


 「……あの、胸……みた?」
 「うん、お前の部屋の光でみえたー、あんまりでかくないな」
 「……っ! ……もうねるし」
 「あーまてまて」


 優志の声が、私をぴたりと呼び止めた。

 「何?」
 「……折り入って話したいことがあるんだけどさ、そのためにきたんだよ、俺」
 「えっ……」


 まあ……話したいことはわかったけどさ、こんな夜中に来ることないじゃん……!!
 私が時たま起きてたから、よかったとして……。
 私はため息まじりに「話って何?」と、問い詰めた。ここで王道パターンがでたら、嬉しいけど……ちょっとなあ。


 「あ〜、てか夜中だし叫ぶのあれだから、どっかで話そう」
 「ん、じゃあうちの部屋おいでよ」
 「えっ」

 優志は、さすがにそれはまずいだろ、といわんばかりに嫌な顔をした。
 そんなに私の部屋はいるのいやかー、あーさいですか、あはは。

 「……いいのか?」
 「ん、私の家、今お父さんもお母さんもいないからーっ」

 そう、だからこんな夜更かしで好き勝手できるのさ!!
 ちなみに龍夜と康義は、熟睡中〜。


 「あ、どうりでこんな時間まで起きてるわけか、じゃあ入るから鍵開けてー」
 「あっ! その前に着替えるから待ってて!」

 私は急いで部屋の中に入ると、クローゼットから下着とパジャマ(裸みられるよりマシじゃ)を着用した。
 そして玄関まで降りて、鍵を開ける。


 「んじゃ、真夜中にお邪魔しま〜す」
 「……ところでさ」
 「ん?」


 私は、何故か胸がきゅううっと締め付けられた。だって、だって、今部屋にいるんですよ!?私の部屋に。
 今冷静になって考えれば、夜中に男と女が同じ部屋にいるって、やばくね……。


 「……あんたなんでこんな時間にきたの? おばさん、怒るんじゃないの?」
 「や、もう怒られてるから。だから家飛び出してきた」
 「なんじゃそりゃ」


 だからといって、いくら幼馴染の家だからって、午前1時に家に来るのは……非常識すぎ。
 ま、嬉しいんだけど!! ……ははは……なんか素直に喜んじゃったし。


 「んで……お話とは何かな?」

 私は、部屋の机の上にあった、レモンティーを飲み干して、そういった。
 
 「あのさ……手紙の話だけど、ほら、あの。天川の……」

 天川……。
 できれば、思い出したくない名前だった。
 あの字からして、あの手紙を書いたのは、天川だと思う。
 でも、なんで優志がしってんの……? あ、同じサッカー部だからその関係で、か。


 「あの、あれ、俺、全部、しって、る、か……」
 「いちいち区切らないで、一気に喋ってよ」
 「あ、ごめんごめん……あのさ」

 優志の、さっきまでの笑顔は途絶えた。真面目な瞳になった。
 その瞬間、私は少しだけ、少しだけドキッとした。


 「あの手紙を書いた……書かせたのは……」



 

 「お姉ちゃん、なにしてんの?」


 肝心のその人物名は、康義の声によって、かき消された。