コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.171 )
日時: 2010/06/11 18:51
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/




 第68話



 「……康義……」
 「ん……? なんで優志君が……?」


 私は、今にも消えそうなほどの小さな声で呟くと、康義は頭にハテナマークを浮かべた。
 優志は、何故だか慌てたような表情をして、立ち上がった。


 「まあ……その、話……」
 「何の話!? 教えてよ」
 「ん〜」


 優志はしばし考えたあと、また口を開いた。



 「ま、教えてもいっか。うん」


 と、独り言のように、自分を頷かせるようにそういうと、ぺらぺらと喋り始めた。
 途中ためらうこともあったが、それでもさらっと、当たり前のように、丁寧に。

 

 「3組の……鈴野愛可……鈴野が、あの手紙をかかせたんだよ」



 鈴野愛可。
 それなりに金持ちで、未だに怜緒などの数人の男子を狙ってるという噂。
 でもどうして、愛可が私なんかを……?


 「でも4組の人が、愛可の命令で、あそこまでするかな……」


 私は、あさっての方向を向きながら、そう呟いた。


  
 「するんだよ、お前しらねえの? 4組男子ほとんどが、鈴野ファンだってこと。
 ファンクラブまであんだぜ。ちなみに女子からは、すっげぇ嫌われてるけど。
 でもあれだな……鈴野の金の力で、女子も言うこときいてんだよ。
 まあ、要するに鈴野はお前を恨んでるってこと。
 それで自分が犯人とばれないように、4組の奴らに濡れ衣を着せたというわけ」


 そうなんだ……。
 私は絶句してしまった。そこまでして、あそこまでして、他人を苦しめたいの?
 私何かした? 愛可に、なにもしてないよ?
 それに男子も女子も酷いよ……。黙って愛可のいうこと聞くなんて、酷いよ。
 

 「でもそれ、誰から聞いたの? 優志君やけに詳しいね!」

 康義が興味心身に、そういってきた。
 姉がいやな目にあってるというのに、この子はキラキラ目を輝かせている。
 天真爛漫な笑顔で……ね。


 「ああ……4組男子で“唯一”愛可を嫌っている人物……姫吉怜緒から聞いた」
 「えっ!? そうなの……? あ、でもなんかここ最近、姫吉君風邪で休んでたし……」


 唯一、クラスの男子で私に危害を加えていない男子。
 唯一、クラスの男子で愛可を嫌っている男子。
 それが、姫吉怜緒——


 「あいつさ『絵磨は大好きだから、絵磨の友達を虐める奴も許せねえ』とかいってたぜ。
 三上に教えてやったら? 喜ぶと思うけど」

 そういって優志は、それまで頑なだった表情に、笑顔を作った。
 その笑顔は、優しい笑顔で……。


 「そういうことかあ、優志、情報さんくす!」
 「おー……じゃ、俺もう帰るわ」

 そういって優志は、部屋のドアを開けた。
 優志の後姿は……恐ろしいくらいに、見とれてしまうくらいに、切なくて、きゅんときた。


 ばっかみたい、私。





**



 「香織ーっ! おはよ」


 私は、今日は日直だったため、早く登校した。
 なので絵磨と会えたのは、1時間目と2時間目の間の、休憩時間であった。
 ざわざわしている廊下……とっさに優志を探す。
 けど優志はいなかった、そしてかわりに……鈴野愛可がいた。




 「まな……かだ」
 「ん? どうかしたの?」


 私は、昨日優志が話してくれたことを、全部絵磨に話した。
 勿論、姫吉君がいってたという、あの言葉も絵磨に伝えた。
 絵磨は嬉しそうに、恥ずかしそうに、顔を赤らめて「えっ」と呟いた。
 しかしそのあと、すぐに顔色を変えて「酷いよね〜それ」と言ってくれた。


 「そうそう! 今日も4組のやつら、睨んでくるしさ〜……。
 それに亜由奈たちを巻き添えにしちゃって、なんかすごい罪悪感……」


 私はそういったと同時に、俯いた。ああーもう、なんだか泣きたい。


 「香織が罪悪感を持つことないよ、悪いのは……。



 黒幕の愛可と、それに従った4組の奴らだよ」




 絵磨の顔は、恐ろしいほどに笑顔だった。




 黒幕……。



 許せないよ。