コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.180 )
日時: 2010/06/13 10:51
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/



 第69話



 「 愛可へ
 昼休み、屋上に来い 」



 それは、憎き黒幕の鈴野愛可に送った、1通の手紙。
 愛可の靴箱にそっと、しのばせておいた。……きっと今頃見てるだろうな。
 アイツは、3組ではいい子ちゃんぶってるし、それなりに仲間はいる。
 けど、私のクラスの4組を使ったほうが、私にとって不利になるからかな。


 ——昼休み



 この学校の屋上は、鍵が掛かっていて、通常は入れないが、ちょっと頭使えば誰でも入れる。
 金具で、ちょいちょいとすれば、すぐに開くんだから。


 「……まだいないね」


 そう呟いたのは、一緒にきていた萌だった。
 何となく心細いので、絵磨・来奈・萌についてきてもらったんだけど……——


 「逃げたんじゃ——」
 「おっまたっせえぇっ〜」


 絵磨がそういいかけた途端、愛可の甲高いぶりっこ声が、屋上中に響いた。
 きーん……と耳鳴りがする。こいつの声は、本当に五月蠅い。


 「……ゆ、うし?」


 愛可のバックにいる、4組の奴らの中には、5組であるはずの、優志もいた。
 しかも愛可の一番傍に、一番傍にいたんだ。


 「でぇ……なぁに? 私達を呼んでぇ? まさかリンチとかでもしようとぉ?」


 愛可は、得意のぶりっこ声でそういうと、私達をにらみつけた。
 同時に4組の奴らも、そして……優志も、私達を睨みつける。


 「ん……じゃあ率直にいうけど! 4組を操ってるのは、愛可、あんたでしょ」
 
 私は、いいたいことをさらりといって、愛可を思いっきり睨みつけた。
 愛可も、私を睨み返すと、口を開いた。


 「……そうだけど、それが何? 大体、わざわざ呼び出して、何しようってんの?」

 愛可の声は、さっきとは違った、低く冷静な声になっていた。
 表情は無表情で。これはきっと、愛可がキレた証拠……。


 「こっちにはいっぱい、仲間がいるんだから。ね、優志」
 「……っ」


 私はなにもいえなかった。
 それと同時に、胸が痛いほどに、締め付けられた。
 ……君は、愛可を味方するの? 私の味方じゃないの?
 教えてくれたじゃん……愛可は悪い奴だって、教えてくれたの、優志じゃん。


 私、優志が好きなんだよ……?



 「怜緒がさ……裏切ったんだよな、愛可を」


 そういったのは、優志だった。冷静な表情で、愛可と同じように呟いた。


 「怜緒はずっと愛可の味方だった。けど、アイツは裏切った……。
 このことが全部、香織たちに漏れたのも、怜緒のせいなんだ。
 本当は怜緒が直接いうべきなのに、俺に香織に言えと五月蠅くて、五月蠅くて。
 仕方なくいったんだよ!! お前に」


 優志は、もう少しで泣きそうだった。
 ……そうだった、んだ。
 愛可は、はぁ……と深いため息をつくと、4組の奴らのほうに、視線を移した。


 「あんたらはもう、教室に帰りな」
 「えっ……でも……」
 「いいから早く!!」
 「はいっ!!」


 4組の奴らは、声をそろえると、ぞろぞろと屋上をあとにした。
 皆の足音が聞こえなくなるのを確認すると、愛可は咳払いをした。


 「……優志、怜緒に濡れ衣着せてくれて、ありがと♪」
 「おう……」


 えっ……? それって……。


 「それってどういう意味ですか!?」


 私の代わりに、聞いてくれたのは、来奈。
 来奈は今まで以上に、険しい表情をして、叫んだ。


 「だって、愛可は怜緒が好きなのに。怜緒は愛可が好きじゃないもん。
 だったら……怜緒もいらない。
 ……今頃4組では、怜緒が裏切り者だって、ののしられてるだろうね」


 そういって愛可は「あはははは!」と、高笑いした。
 その笑いは、屋上だけじゃなくて、きっと校舎中に響き渡っただろう。
 それくらい、愛可の高笑いは、けたたましかった。


 「じゃあ……怜緒が、私に、言ってくれた言葉、は……?」
 
 そう聞いたのは絵磨。絵磨は、顔を青ざめて、聞いた。


 「あれ……?




   俺が作った、う そ」





 そういって、優志は、にやりと悪魔のような笑みを浮かべた。