コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.182 )
- 日時: 2010/06/14 13:50
- 名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
- 参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/
第70話
「……嘘、って……どうして? わざわざ何で嘘言うの……?」
そう聞いたのは、紛れもなく絵磨だった。
目には涙を浮かべていて、これ以上になく、顔を青ざめていて。
けれど……眉間にはしわをよせていて、すごい形相で、優志と愛可を睨んでいた。
優志は再び、にやりと笑みを浮かべると、口を開いた。
「リアルっぽさを出す為。
あと……馬鹿三上のことだから、こんなこといったら、信じるだろうなって。
浮かれやがってよ……馬鹿が」
優志がそれをいったと同時に、絵磨は突然優志のほうに直進してきた。
そして、絵磨が右手を振り上げたと思うと——
次の瞬間、バチンッという鈍い音が、屋上に響き渡った。
その音は、私にも快く聞こえて……。
絵磨が、優志の頬をぶっ叩いた音であった。
「最低っ! 人をおとしいれるなんて、騙すなんて、卑怯者!」
絵磨は必死で、優志に反論した。しかし優志は、まだニヤニヤして絵磨を、馬鹿にしている。
——もう限界!!
私も、もう怒りが抑えきれなかった。
「優志! ……あんたがそんなんだとは思わなかった!
馬鹿はそっちだよ、絵磨のほうがずっーっと、お前なんかより頭いいし!
馬鹿最低人間精神年齢幼稚園以下、人間のゴミ、卑劣卑怯アホ」
私はいい終わると、はぁっ……とわざとらしく、ため息をしてみせた。
ちょっと言い過ぎたかな……でもまあ、コイツにはこれくらいいわないとね。
「……ねえ香織」
そういってきたのは、萌。私は、萌のほうに視線を移して「ん?」と返事をした。
「……もう、こんな最低男、好きじゃないよね」
「あったり前じゃんっ! 愛可と優志は最低コンビとして、一緒にいれば?」
本当なら、ズキッと心が痛むと思う。
本当なら、すごく罪悪感が募るし、嫉妬してしまうと思う。
けど今は……そんな感情これっぽちもない。
好きな……いや、好きだった奴に、今は憎しみの感情しかない。
「あ〜……あとさ、優志の弟にあんたと別れるように指図したんも、私と優志だから」
冷静な声で、そういったのは愛可。
……っ!! どこまで、どこまで、この人たちは……人間を不幸にしたら気が済むの?
「……あの、いいですか?」
「え?」
来奈は、突然私・絵磨・萌に問いかけてきた。
「……姫吉先輩のとこ、いってあげませんか?」
「うんっ!! 行こう」
「……今すぐ行きましょう!」
来奈の言葉で私達3人は、屋上のドアを思いっきり開けた。
そして、チラッと後ろをみた。
呆然と突っ立っている、最悪2人組。
「はんっ」
私は皮肉をこめて、2人を鼻で笑ってやると、思いっきりドアを閉めた。
ドアの閉まる音は、気持ち良いくらいに、響き渡った。
好きだった人、私の好きだった人。
もう君は、昔の君じゃない。
最悪な人間に変化を遂げた、私の知ってる君じゃない。
さよなら、ありがとう。