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Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.218 )
日時: 2010/06/15 23:27
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/




第71話



 「…………」


 私は今、三井家の家の前にいる。今さっき、チャイムを鳴らしたばかりだ。
 自分でもなんで来たのか、理由を聞かれれば、曖昧にしか返事はできないだろう。
 それでも……ここにきてしまった、三井優志の家に。
 しばらくして、辰雅がドアをそっとあけて、出てきた。
 
 ……前もこういうことあったなあ。
 もしかして辰雅は、お母さんとかがいないときの、接客係……かな?
 まあいいや。


 「あれ、香織姉……どうしたの?」
 「ん、あ……その、今……家にほかに誰かいる?」
 「……いないけど」


 「そっか」と私は、頷いて返事をした。辰雅は、きょとんとしながら、私をジッとみつめる。
 
 「にしても、なんの用? 僕に?」
 「うん! あのね、ちょっと教えてほしいことがあるんだけど……」


 私は、そこで息をふぅっと吐いて、深呼吸をした。それを何度か繰り返し、辰雅をみる。
 しばらく間が空いたため、辰雅は更に不審そうな顔をして、私をみつめた。


 「優志って、家でどんなかんじ?」



 私が聞きたかったこと、それは、まさに今いったこの言葉であった。
 それを、辰雅は意味をとり違えたのか、突然ニヤニヤと笑みを浮かべた。


 「ははーん、かおりん、優志兄が好きだからって、それはやりすぎじゃない?
 私生活まで聞いちゃってさーっ!
 ある意味ストーカーかもよ」

 そういって辰雅は、可愛らしくクスクスと笑った。


 「違うし! ちょっと事情があって聞いてるだけ! 興味といえば興味だけど。
 でも絶対に、そういうことじゃない! 違うから、ほんとに!」


 自分でもなにいってるかわからないほどに、必死に弁解をした。
 今までなら、恥ずかしくて弁解してたけど、今は……本当にいやで弁解してる。
 
 「ね、お願い! 教えてくれないかな?」
 「ん……。優志兄ね……スズノマナカって人と、よく遊んでるよ」


 
 スズノマナカ。
 紛れもなく、鈴野愛可のことだった。
 辰雅の話によると、愛可と優志はよく休日に遊んだり、お互いの家にいってるらしい。
 そして性格面については、最近荒っぽくなったらしい。


 ……辰雅は、延々と優志について語ってくれた。
 態度が前よりも冷たくなったこと、部屋にこもるようになったこと。
 ご飯すらも、1人で部屋で食べるようになったこと。
 そのことから、昨日は一言も辰雅と、口を利いてないとのこと。

 時々、笑みを浮かべて、悲しげな表情を浮かべて、怒りの表情を浮かべて。
 くるくると表情のかわる辰雅は……とってもかわいかった。


 ……そして、ついつい優志と面影を重ねてしまった。
 昔の優志と、今の辰雅は恐ろしいくらいに顔が似ている。
 昔は優志も、こんなに純粋な子だったのに——……



 「……それくらいかな。もうとくにない……」
 「そっか! 長々と語ってくれてありがとねっ!」
 「うんっ」
 「じゃあ私、そろそろ帰る——」


 そういって、後ろをくるりと向いた瞬間だった。



 門前に、今帰ってきたばっかりであろう、男の子が立っていた。
 男の子は、私をフッた——
 孝文だった。

 正確には無理やりフッた、かな。



 「……よっ」
 

 孝文は何故か満面の笑みで、そういってくれた。