コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.285 )
- 日時: 2010/06/21 22:13
- 名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
- 参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/
番外編「小学生★ライフ」
孝文side
「……は!? 意味不明、何いってんだよ」
俺は恥ずかしくなって、ぶっきらぼうな態度を向けた。
なんかもう……顔が赤くなって、花梨のほうむけねえーっ!!
こいつのこと嫌いなんだよ、俺は!!
「……ぶりっこしてたら、三井君の気が惹けると思ってた——!!」
その言葉で、俺は思わず花梨のほうをむいてしまった。
花梨は、目に涙をためて、唇を噛み締めて悔しそうな表情を浮かべている。
「それなのに……三井君は、他の女の子ばかりみてる。
私のことなんて、嫌いなんでしょ。
……気付いた、ぶりっこじゃなく、素の自分を好きになってもらおう……って」
こっ、こいつ……ぶりっこが本性じゃなかったのかよ!
ちょっと意外だ、まあ……あれだな、普通に喋ったら……。
「素のお前も嫌いだよ」
と言う言葉は、口が裂けてもいえなかった。
こんなに自分のことを想ってくれてる人がいるなんて、はあ。
でも……やっぱりな、コイツ、さっきまでの態度とガラリとかわった。
「好きになってくれなくていい、せめて……嫌いにはならないで!」
花梨は、涙をこぼしてそういうと、数秒間立ち止まって、ため息をついて部屋をでていった。
…………。
部屋のど真ん中に、無造作に放られている、ぬいぐるみ。
花梨がさっきまで、触ってたぬいぐるみ。
俺らがゲームしているところを、花梨はどんな気持ちで見てたんだろう。
どんな気持ちで……ぬいぐるみで遊んでた?
「何か酷いことしたなあ……」
俺は、独り言を呟いた。
その声は、俺でもやっと聞こえるくらいの大きさだった。
もちろん、聞いてる奴は他に誰もいない。
なんだか虚しくなった。
罪悪感が、つのる。
**
「好きになってくれなくていい、せめて……嫌いにはならないで!」
何回もその言葉がリピートされる。
夜、俺は布団の中にはいったのに、なかなか寝る気にはなれなかった。
いつもならすぐに寝るのに、今日は睡魔がおそってこない。
「辰雅」
俺は、なんとなく隣の布団にいる辰雅に、ぽつりと話しかけてみた。
辰雅もどうやら起きているようで「なに?」と返事をしてくれた。
「……お前、好きな人いる?」
「いるよ!」
即答だった。俺は思わず、背を向けていた体を、辰雅に向ける。
「誰だっ!?」
「僕の知ってる人皆、皆好き!」
ああ……そういうことか。恋愛としての好き、ではないわけか。
俺は納得したように、口を開いた。
「随分幸せ者だな、嫌いな奴いねえの?」
「う〜ん……この人はちょっと、って思うことはあるよ。
でも、その人にも良いところは絶対あるとおもう。
だから……嫌いにはならないかな」
コイツは、嫌いな奴でも良いところみつけて、頑張って付き合っていくタイプか。
……うん、だからコイツあんまり人から、嫌われねえのか。
なるほど、やっぱり愛される人は、愛すことも上手なのか。
「……ところで、何でいきなりそんなこときいたの?」
「あっ……いや……別に、聞いてみたかっただけ、おやすみ!」
俺は、また辰雅に背を向けて、目を閉じた。
思い浮かぶのは、花梨の顔。
花梨のあの、悲しそうな悔しそうな表情。
……ダメだ、消えない。
アイツの存在が俺の頭から、消えない。
明日は、明日は、もっとアイツに良い態度をむけてみよう。