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Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.333 )
日時: 2010/06/24 18:31
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/



 番外編「小学生★ライフ」


 孝文side



 放課後。
 俺は慶一と龍夜に「用事があるから先帰ってて」といって、先に帰ってもらった。
 俺はずっと教室で、自分の席に座って、ノートを開いていた。
 ……いや、別に何もかいてないんだけどさ。
 ほら、教室でボーッとしてたら、なんか変だろ。
 ……実は、用事なんかないんだよな、目的は……。


 「あっ、孝文君、まだ教室にいるの?」


 そう、村井たちを待っていたのだ!!
 俺は「今から帰るとこ」といって、慌ててノートをランドセルにしまって、ランドセルを背負う。
 そして教室から出た。


 「……なあ村井、お前林野の連絡帳、もらってない?」
 「え? あ、あるけど……」


 村井は、右手にもっていた、連絡帳とプリントを、俺の前に差し出した。
 俺はとっさにそれをひったくると「俺が届けてきたい」と呟いた。
 村井は、大きく目を見開いて「え!?」と声を漏らす。


 「……また、なんで?」
 「まあ色々と。じゃあこれは俺が届けるから!」
 「あ、うん」


 村井は納得したような、そうでないような返事をした。


**


 せめて……せめて、これくらいはしないとな!
 俺は林野の家に向かう足取りが、すごく軽かった。
 朝はあんなに会いたくなかったのに、今はすごく会いたいと思う。
 ……変なの!!

 林野の家の前につくと、俺はすぐさまインターホンを鳴らした。
 ……インターホンの音でさえも、俺にとっては一種の、何かのBGMに聞こえてくる。
 しばらくして、お母さんと思しき人が、玄関から出てきた。そして、目を見開いて驚く。


 「……あら……三井君?」
 「あ、そうです! こ、これ……花梨ちゃんに届けにきました」


 花梨ちゃん、っていうのはなんとなく気恥ずかしかった。
 別に苗字でも良かったんだけれど、家族には下の名前のほうが、通じやすいかなって。
 

 「……どうせなら、部屋の中にはいってやって」
 「え!? い、いいんですか!?」
 

 まさか、そんなことをしてもいいのか。
 おばさんは俺が「はい」という前に、家の中にいれてくれた。
 香水の匂いがして、とても良い気持ちだ。……というか、綺麗な家だなー。
 俺は、何回も瞬きして、きょろきょろしながら、辺りを見回した。
 そしたら……いつのまにか、俺は花梨の部屋の前にいた。



 いまさらだけど、鼓動のスピードがあがる。



 「花梨ーっ! ……三井君がきてくれたわよ」
 「えっ!?」


 ドア越しから、まぬけな女の声がした。……なんだ、声聴いただけで元気そうじゃん。
 俺は少しホッとした。

 「……いいよ、はいって」


 しばらくして返って来た、花梨の返事とともに、俺はドアノブを握った。


 「……三井君!」


 花梨の部屋は、冷房が効いてて、途端に冷たい風が、俺の体を冷やしてくれた。
 花梨は、明るい笑顔で、ドアの前にたっていた。
 こんなに近くにいるのに、手なんか振ってくれている。


 「あ、林野……あの、その、連絡帳……」
 「わー! 届けてくれたの!? ありがとうっ、嬉しい♪」


 俺から貰った連絡帳を、両手で抱きしめて嬉しそうにする花梨。
 うん、やっぱこいつ、ぶりっこじゃなかったら、普通にかわいいな。
 ……てかなんか、緊張するし、さっきから。


 「……ところでさ、お前、今日なんで休んだんだ?」


 俺が話題を変えようとして、尋ねると、花梨のそれまでの笑顔が、切ない表情に変わった。
 あ……ちょっとまずいこといったかな、うは、どうしよう。


 「……三井君と顔合わせるの、嫌だったの。昨日あんなこといったでしょ。
 でも! ……なんか、三井君の顔みると、元気でた。
 変だよね〜私!!」



 花梨はまた、元の表情に戻った。
 あ、よかった……。



 「……じゃあ今日は、ここで帰るな。じゃあ」


 俺はそれだけいうと、林野の家をあとにした。
 名残惜しいとは思わない。
 むしろ早く家に帰りたかった。


 これ以上いたら、あいつが好きになるだろ。
 ……好きになんかなりたくねえし。