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Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.360 )
日時: 2010/06/26 21:23
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/



番外編「小学生★ライフ」


孝文side



 「聞いた? 林野が転校するってー!!」
 「えー!! 超嬉しいんだけどー!!」
 「早く夏休みにならないかなぁー!!」
 「夏休みになったら、もう兵庫にいないもんねー!!」


 わざとらしく、叫ぶのは……俺たちの会話を聞いていた、男女グループだった。
 花梨はぶりっこなため、結構嫌われている。
 昔はなんか、虐められていたらしい。


 その声に反応した花梨は、ふとこちらを振り向いたかと思うと、すぐにまた前を向いた。
 一瞬だけ……花梨が、泣いてる様に思えたのは、気のせいだろうか。


**


 俺は、みてしまった。その日の放課後、花梨が男女グループに虐められているところ。
 今はもう、空き教室がほとんどの、北校舎の裏側で。
 声がしたかと思って、そっと覗いたら……。


 「林野、もうすぐ転校するんだってね……」


 リーダー格の女子が、鋭い目つきで花梨を睨みながら、冷たい声でそういった。
 その声には、感情などと言うものは存在しない。
 まるでロボットが喋っているかのよう。


 「そうだよ……」
 「寂しくなるねえ……悪口言う相手がいなくなるし」


 男子がいったとたん、突然奴らは笑い始めた。
 う、うわ……これって助けるべき? なあ、これ助けるべきかよ?
 俺はおどおどしていると……。花梨がふいに、こちらをみた。


 「っ……!!」


 目があってしまった。
 花梨の目は潤んでいて、もう少しで泣きそうで、声には出してないけど……。
 助けてくれといってるみたくて。
 前へ進むはずが、いつのまにか、俺はその場を去っていた。



 「……知るか、あんなの!!」



 俺のいくじなし、なんで助けてやらねえんだよ。
 馬鹿、あほ。



 それから、俺は花梨を避けるようになった。
 廊下ですれ違ったら、すぐさま下を向くか、すぐに通り過ぎるか。
 話しかけもしないし、目もあわさないようにした。
 クラスが違うというのが、唯一の救いだよな……。


 前は夏がきてほしくなかった、けど今は、すごく、夏がきてほしいと願っている。



**


 7月19日。
 今日は、海の日で一応休み。
 なんで3連休明けに終業式なんだよ……タイミング可笑しいだろ、明らかに。
 明日学校行ったら、ついに、ついに。
 花梨は、東京へいってしまう。
 俺はふと、部屋に飾ってある写真に目を移した。
 この6年間で、何度か花梨と同じクラスになったことがあった。
 自然学校……という名の宿泊学習のときの写真とか、学級写真とか、色々。
 色んな所に花梨が写っている。
 そしてもう、花梨と写真を撮ることはないんだろうな……。


 この笑顔も、あの言葉も、すべて、すべてが明日で遠くへ行ってしまう。
 ……嫌だ。
 なんて思った俺は、なんて自分勝手なんだろう。
 虐められているところを、助けることもできない、最低な奴が……、何をいってるんだよ。
 

 「……花梨」


 謝ったら許してくれないこともわかってる。
 もう、俺のことなんか嫌いだろう。
 けど、せめて、せめて、最後に。


 逢いたい。