コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:  ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.382 )
日時: 2010/06/30 22:19
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/


 第74話



 ファーストフード店の、駐輪所に自転車をとめると、私はふと、ショーウインドウをみた。
 そこには、偶然すぐ傍の席に座っていた、絵里那がこちらをみて、手を振っていた。
 私は手を振り返し「今からそっちいくね」とだけ伝えて、店の中にはいった。


 「やー、香織! こうやって遊ぶの、クリスマス以来だね」
 「だねっ!」

 クリスマスの日、私は……偶然街で絵里那と遭遇して、一緒にパーティしたっけ。
 ……もう半年も前になるのかあ、改めて、時がたつのは、速いと思った。
 私達は、商品を注文すると、席に座って、食べながら話を始めた。


 「……ところでさあ、香織、知ってる?」
 「……え?」


 絵里那は改まって、私にきいてきた。その顔は、無表情ではないが、特別笑顔でもない。
 絵里那が「あのね……」といった瞬間、なんだか、聞くのが怖くなった。
 ……私に関しての噂話とか、そういうのだったら、どうしようとかね。


 「……三井と鈴野、付き合ってるって」
 「えっ!?」


 ……これは初耳だ。私は、驚くには驚いたが、何故かそこまで吃驚はしなかった。
 すぐに忘れてしまいそうな、ただ、ほんのちょっとだけ、驚いた。
 まあ……あの2人、結構つるんでるし、付き合っても不思議はないんだよねー……。
 と、完全に他人事。いや、他人なんだけど。でも、好きだった人だし……。
 

 「証拠に、今からそいつらのプリ送る」


 絵里那はそういって、携帯をひろげると、カチカチとボタンを打ち始めた。
 やがて、鞄の中にある、私の携帯の着信音が鳴って、私は携帯を広げた。
 

 「……うわ」


 絵里那からのメールに添付されている、プリは、やはり優志と愛可のツーショットであった。
 しかも、チュープリ。そして、落書きがとりあえずすごい。
 デコりすぎでしょこれ……「らぶらぶかっぷるです(はぁと)」とかかいてある……。
 

 「絵里那……」
 「やばいでしょ!? そのプリ、美緒から送られてきたんだけどー」


 美緒、金原美緒か。
 絵里那がクラスで一番仲のいい女子。
 絵里那の話をきいていると、どうやら愛可が自慢で、5組のある女子に、このプリクラを送ったらしい。
 それが、もれてしまって、このプリクラが、出回っているというのだ。


 「あんたさ……三井や鈴野とかに、酷いことされたんでしょ?」
 「ま、まあ……」


 あんまり思い出したくはないけれど、私は、あのときの記憶をたどって頷く。
 絵里那は、黒い笑みを浮かべた。


 「だったら、ね……?」
 「……え、あ……うん」


 絵里那の言葉の意味を察した私は、早速メールの送信箱を開いた。



 「 みてみてー!! 優志と愛可の、チュープリだよ(笑)
 これみんなに、回してね〜♪
 今、2年5組で、出回ってるらしい(・ω・) 
 From 香織 」


 とりあえず絵磨、萌、来奈、龍夜、孝文に送信することにした。
 私は送ったあと、絵里那に「どんな反応が返ってくるかな」と呟いた。
 ……1分後、皆からの返信があった。



 「 なにこれ、超ウケるwwwww
 つか、気持ち悪いw
 From 絵磨 」


 「 うわあ……痛々しいね(笑)
 チュープリって、すぐ別れるっていう
 都市伝説あるよね(^^)
 From 萌 」

 
 「 平安カップル成立ですか!!
 にしても、何度見ても笑えますね〜
 From 来奈 」

 
 「 ちょ、なんだこれ……。
 鈴野と優志って付き合ってたのかよ……
 似合うな、おい(爆)
 安心しろ、優志にはいわねえから(^∀^)
 From 孝文 」

 
 「 くだらねえ
 つかきめえ(笑) 
 From 龍夜 」


 このメールを全部、絵里那にもみせた。


 「ぶ……っ、皆面白い返信するね」
 「だよね……あー! なんかすっきりしたかも」


 私はそういって、ドリンクを飲み干した。……あのプリ、これからも広がるのかな。
 ふふふふ、あはははははははははは!!
 って完璧悪になってるな、私。
 でも、これって仕返しだよね、うん。



 ——回想終了。



 「というわけなのです」
 「……お前、最低だな!!」
 「あんたには言われたくない」


 優志が、真剣な顔をして、私の首根っこをつかんだが、私は平然な顔をしていた。
 ……つか普通、男子が女子に本気でつっかかるか? 力加減考えろよ。
 その後、しばらく沈黙が続いた。重い沈黙。皆、黙っていた。
 その沈黙を破ったのは、愛可であった。


 「酷い! どうして、どうしてそんなことするの!?」
 「……とりあえず、自慢に友達にプリ送ったことがわるかったね、ばいばい、愛可君」


 私はそれだけ言い捨てると、速足で教室に戻った。
 ……悪いことをしたような、いいことをしたような、複雑な気分で。