コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.440 )
- 日時: 2010/07/11 21:17
- 名前: かおり、 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
- 参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/
第79話
まだ、ハンカチを頭に被せれば、雨を防げる(頭だけ)程度だったので、私達は河川敷まで向かった。すでに、たくさんの人たちが集まっている。
「あそこ、いいんじゃないですか?」と来奈が比較的、人が少ない場所を指差した。私と萌と絵磨と来奈は、そこに移動する。うん、人が少ないおかげで、ゆったりして花火をみれそう!
「花火やるかなあ?」と、隣にいる絵磨に話しかけようとした、そのときであった。突然、小石のようなものが、頭上に降りかかってきたかと思うと、音をたてて、雨回しが強くなった。
みるみるまに、ハンカチはべったりと濡れてしまい、髪の毛にまでその水が浸みる。私は、ふいにハンカチをとって、頭を両手で押さえた。皆は、シートなどをとりだして、自分達で雨宿りしている。
「うちら、シートないし〜」
萌がそういう。私達4人が、ぐるぐる走り回りながら困っていると、遠くから聞き覚えのある声がした。「こっちこっち!」と呼んでいる。声のするほうを向くと、龍夜が手招きをしていた。シートにはいっているらしい。
「はやくこいよ!」
「うん!!」
私たち4人は、龍夜たちとおなじシートをかぶって、なんとか雨宿りをすることが出来た。と、そのときである。隣から、嫌な声がした。
「愛可たちもいれてぇ〜」
「俺らびしょぬれじゃ〜ん」
げ、優志と愛可。
しかし龍夜は「ごめん、もう満員」といって、2人に断った。確かに、私、絵磨、萌、来奈、龍夜、康義、孝文、辰雅、慶一の9人になれば、満員になる。
優志と愛可は、平安度をあげた困った顔をして「えぇ〜!?」と驚いた。いやいや、みれば、満員ってわかるでしょ。
「いや〜ん、風邪ひいちゃう〜ん」
「安心しろ! 俺が守ってやる」
髪の毛までびしょぬれの2人は、優志が愛可を覆いかぶさる、という変な状態になっていた。……ってかよくみたら、この2人以外の観客は、皆雨宿りしている。してないのは、この2人だけだ。つか、めっちゃ目立ってるし。
「ぶーっ! 平安の髪の毛、貞子みてえー」
孝文が、小声で私達にそういった。私達は爆笑に鳴る。私も2人のほうをチラッとみた。髪の毛がぺたーっとなっていて、目が前髪で隠れている。その髪からは、大粒の雫が零れていた。
「早く雨やめよな」
愚痴のように呟くのは、慶一。今気付いたけど、慶一は私のすぐ隣にいた。慶一は、龍夜の友達で、眼鏡をかけていて、背は高いほう。
龍夜から聞いたんだけど、この人、2人の女子と両想いならしい。まあーかっこいいちゃあ、かっこいいけどねえ。
**
雨がやんだのは、それから1時間後の20時のことであった。私達は被っていたシートを折りたたんで、夜空を見上げる。さっきまでの雨は嘘だったかのように、紺色に染まった夜空。
「へっくしょん!」
「寒い〜」
私達の傍に、くしゃみをしている平安がいる。私達は半ばスルーしていた。考えてみれば、結構陰険だとおもうんだけど、こいつらはそれ以上に陰険なことやってたからねえ。
「うっ!」
私は突然、変な声をあげた。萌はとっさにこちらをむいて「どうしたの!?」と言う。私は「ちょっと……トイ……レ……」と、言うと、走ってトイレのほうにむかった。
浴衣着てるからちょっと走りにくいけど、今はそんなこと気にしてる場合じゃないから! 尿意のために、走る女、七瀬香織! あートイレー! 早くトイレつきたいよー!!
私は必死の思いで、女子トイレのなかにはいって、用を足した。個室から出ると、手洗い場の蛇口をひねる。水がジャーッとでた。
それを待っていたかのように、ドーンという、かみなりのような音が、鳴り響いた。その瞬間、「おー!」という歓声が聞こえてくる。それから、何回もドーンという音が聞こえてきた。
花火がはじまったらしい。あー、最初の一発見逃しちゃったなあー……と思いながら、トイレからでて、空を見上げた。
「すご……」
と、独り言を呟くほどに、感嘆してしまった。紺色のキャンパスに、突然何色もの絵の具が飛び込んできた感じ。打ち放っては消え、打ち放っては消え、それを繰り返し続けている。私は、チラチラと空を見上げながら、皆のいる場所に戻った。
「ごめん、おま……あれ?」
「あ、香織先輩。絵磨先輩も萌先輩も、彼氏見つけて……あの状態ですよ」
来奈は後ろを親指で、指差した。絵磨は姫吉君のとなりに、萌は伊藤君の隣に座っている。……こうやってみると、すっごいロマンチック!
「いいよねー彼氏。来奈好きな人いないの?」
「いませんよー香織先輩は?」
「私?」
わからない、わからないけど、なんだか勝手にくちが動いたんだ。これは本能なのかもしれないけど、自分のことがわからないなんて、変なの。
「今、前の列の右端の人、かな」
右端の人、坊主頭で私より背が高いのに、なんか幼稚で、変な人で、でも運動神経めっちゃよくて、野球とかすっごい上手で、優しくて。血の繋がってる、平安などっかのバカ野朗とは、全く違って。
その男の名は、三井孝文。