コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ・Cheryy・ —2つの果実— ( No.505 )
- 日時: 2010/07/15 19:47
- 名前: かおり、 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
- 参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/
第80話
「え、あ……そうなんですか」
来奈は、半ば驚いた表情を見せると、小さなため息をついて「私、そういう人いたことないんですよねー」と、呟く。
「そっかあ……でもそのうち、きっとできるよ」
「だといいんですけどっ」
私が言葉をかけると、来奈は、またいつもの笑顔に戻った。それから数秒間の沈黙が続き、また来奈は口を開いた。
「あの、先輩……、香織先輩は……その、あの」
来奈は、途切れ途切れに恥ずかしがりながら、喋った。私は心の中でかわいい、なんて思いながら、微笑ましく来奈を見守る。しかし、来奈はなかなか続きを話そうとしないので、私は「どうしたの?」ときいてみることにした。そしたら、ようやく口を開いた。
「孝文君のこと……どれくらい好きですか?」
「えっ!?」
急にそんなことをいわれたので、私は素っ頓狂な声をあげてしまった。何事かと、隣にいた観客が、私のほうをチラッと向いた。私は、人差し指と親指で、円を作り「こんくらい」といった。
「へえ……先輩、遠慮しなくていいんですよ」
「えっ、遠慮なんかしてないよ……!!」
「あのですね、私、できるだけ、先輩の力になりたいんです……」
「えっ?」
来奈は、真剣な瞳で、私をジッとみつめてそういった。
「……ってことで、その、ほいっ!」
「えっ、あっ、あ〜っ!!」
来奈に、背中を思いっきり押されて、私はつまづきながら、前に足を運ばせた。ぎゃ〜! ぶつかるって、ぶつかるって、ぎゃああああああ!! 心の中でパニクっていると、やはり何かにぶつかった。
「いて……ん?」
「……あ、すいま……あ、なんだ、龍夜か」
私がおそるおそる、顔をみあげて、最初に目にはいった顔が、龍夜であった。その横に孝文と慶一がいる。「気をつけろよ」と龍夜は一言いうと、また花火に見入ってしまった。
「す、すいません! 先輩!」
「いや、大丈夫だよ」
来奈は、両手をあわせて、真剣に謝っていた。やっぱり、来奈のこういうところは、かわいい。私は、立ち上がると、元の位置に戻った。
「孝文君とぶつからせようという、王道展開にしようと思いましたら……」
「いやもう大丈夫だよー!! 平気平気!」
来奈はいまにも泣きそうな顔をしていたので、私は笑顔で来奈にそういった。
**
花火大会は、午後10時に終わりを告げる。今は、9時半。あと30分で、熱気に満ち溢れているこの河川敷からは、人気もなくなるのであろう。私達は、まだまだ花火に見入っていた。どん、どん、と音を放っては消える光。色とりどりの光。不思議。
「綺麗だねぇ……本当に」
「そうだな」
独り言で呟いたつもりが、返事が返って来たので吃驚した。声のするほうを見なくても、誰がいったのかはわかった。孝文。げ、なんで……。まあいいや、とりあえず、話題を探そう。
「あっ、あの、あ、あれ、あふぇ……おふぁ」
「落ち着けよ……」
「だっ、だって……」
「だって、じゃねえよ」
孝文はいつものニコニコした笑顔で、私にそういった。……あ、なんかいつもの孝文だ。なんか嬉しい、なんでだろう、すごく嬉しいんだ。普通に会話できたことが。
「それよりお前、もう帰るか?」
「いや、まだいる……」
「そうか」
孝文はそれだけいうと、また黙ってしまった。う〜む……なんか他に話題、話題ないかねえ。そう思いながら、うんうん頭をうならせていると、隣から声がした。
「おー、孝文。いい雰囲気のとこわりぃけど、もう俺ら帰るぞ」
「しかし、孝文の趣味が姉貴って……」
慶一と龍夜。うぬっ、なんじゃこいつら。2人は、さっさと向こうへ歩いていってしまった。孝文は「まてよー!!」と叫びながら、走っていく。……あ、どうしよう、どうしよう! その時、とっさに声がでた。
「まって!」
「ん?」
孝文は、振り向く。
「じゃ、じゃあね……!!」
「おう、じゃあな!」
孝文は笑顔で、そういうと、また走っていってしまった。……あ、好きだ。孝文の仕草で、孝文の表情で、声で、私はそう確信した。胸の鼓動の速さが、増す。顔が紅潮する。
「…………」
私は、そのまま硬直してしまった。