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Re:   ∞  真夏の果実   ... ( No.11 )
日時: 2010/05/25 21:24
名前: 香織 ◆r/1KAORIEk (ID: ZclW4bYA)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/

 第1話



 「あーっ、あぢぃ……」


 7月中旬。もう夏休みはすぐそこで、嬉しいはずだった。気分がハイになるはずだった。
 ……しかし、こんな暑さでハイテンションになれる奴の、気がしれない。
 気温……只今、34度。うだるような暑さ。今すぐにでも、溶けてしまいそうな勢いだ。
 

 「武! もう夏なんだよなーっ」
 「…………」


 この炎天下で、暑がらない人間なんて多分いないと思う。
 ……今俺の隣にいる、友人の野比英才を除いては。
 コイツは、筋金入りの寒がりのくせに、暑がりな場面は1回もみせたことがない。
 ある意味、少しだけ羨ましいと思った。


 「おーい、武ー……返事くらいしたらどうだよ」
 「…………」


 英才が、俺の顔の前で手をふったりしてくる。
 俺は「おー」とだけ、返事をした。


 「……武って本当暑がりだよな」
 「そういうお前は……寒がりなくせに」
 「うるせぇよ」


 英才とは、昔からの友人だ。でも、共通点は、ほとんどなかった。
 それなのに友人でいられるというのは、何か……不思議な縁でもあるのだろうか。
 例えば、俺は懐かしいものや古いものが大好きなのに対し、英才は常に流行を追いかける。
 俺が和食が好きなのに対し、英才はジャンクフードを好む。
 ……まあ、趣味が違う友達というのも悪くはない。


 「なあ、今日お前ン家で勉強がてらに、泊まっていいか?」
 「……はぁ?」


 勉強、そういえばもうすぐ塾で、実力テストがある。
 全く、せっかく受験も終わって高校生になったのに、また勉強かよ……。
 まあ、この前に期末テストがあったんだけれどもな。学校で。


 「なぁいいだろー、1人より2人のほうが効率良いって」


 ……勿論、この不真面目男の英才が、本当に勉強がしたいわけじゃない。
 目当ては、俺の姉貴の、源スミレだ。


 「姉貴目当てだろ、どうせ」
 「おっ、武なんでわかんだよー」
 「……お前な、何年の付き合いだとおもってんだよ」

 
 俺は軽く笑うと、英才は「でへへ」と変な笑い声をだして、頭をかいた。
 
 「じゃあ、荷物まとめてこっちにこいよ」
 「うぃっす! じゃなー!!」

 英才は持ち前の元気さで、なんとダッシュで家に向かった。
 全く、この暑いのに……。
 ……なんか俺、さっきからじじくさいよな……。
 まっ、いっか。どうせじじ趣味ですよーだ。


 「ただいまー」


 さて、家に帰ったら帰ったで、また色々と大変である。
 俺は、リビングで大音量で音楽を聴いてくつろいでいる、姉貴をみてため息をついた。
 姉貴はこっちに気付く様子もなく、ただただ、最新のJPOPを口ずさんでいる。


 「……姉ちゃん! 大学は!?」


 俺は、CDプレーヤーの音量に負けないくらい、叫んだ。
 そしたら、ようやく姉貴はこっちに気付いたようで「お、お帰り」と呟く。

 「今日は、午前までしか授業とってなかったのー」
 「あっそ」


 俺はまたため息をつくと、耳をふさぎながら冷蔵庫を開けた。
 そして、大好きな緑茶をコップに注いで、口に入れる。
 途端、冷たさが喉にしみた。一気に、生き返る。


 「はぁーっ」


 俺はまたため息をつくと、自分の部屋へ向かった。