コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

番外編:とある夏の出来事〜後半〜 ( No.107 )
日時: 2010/07/07 23:46
名前: 遮犬 (ID: SmzuliUF)

それで・・・俺たちは初めてとなる椿の家へと向かったのだが・・・。

でっけぇ、何コレ。というのが感想だ。うん、これしかいえねぇな。俺は家については詳しくないんでな。

「どうしました?早く奏君も入ってくださいよ♪」

いつの間にか俺だけ取り残されてるっていうな。どうやらビックリしていたのは俺だけらしい。

数分後・・・

内装もかなり綺麗に施されており、素人の目から見てもまさに豪華そのものだった。(それしかいえない)

「それで?お詫びって何?」相変わらず他人には冷たい目線と素っ気無い口調でいういーさんこと智。

「え、えーと・・・」夕姫が固まっていた。どうやら後のことを考えていなかったようだ。何てやつだ。

「料理とかどうでしょうか?」椿が提案した。なるほど・・・っと待てよ。夕姫って料理は・・・。

「えっとー・・・え?料理・・・?」

「はい♪夕姫さんは確かこの前家庭科の授業でクッキーうまく出来て美味しかったとかいってましたよね」

「うぐっ!」うぐってなんだ。うぐって。

「そしてこの前もケーキがとても甘くて美味しいのが出来たとか・・・饅頭も作って甘くて美味しいとか」

「もうやめてぇええええ!!!」なんでそんな否定した叫びをしなければならん。

それが事実なら良いことじゃないか。あ、そうか。多分恥ずかしいんだな。夕姫のことだからなぁ・・・。

自分の一番不得意な料理を選ばれるとは夢にも思わなかったろうに。

多分甘くて美味しいというのは、甘すぎて味覚が凌駕してしまって美味しく感じてしまったということか。

それか何か薬を入れてんじゃあるまいな?それで味覚をおかしくさせたりとかして美味しくさせたとか。

どちらにしても何にしても料理がうまくなかったということは確かな情報だということをお分かり頂けると幸いだ。

「む、むぅううう・・・・」夕姫がうなってる。あいつ精神崩壊してしまうんじゃないか?

「それは楽しみだね。僕はお菓子にはうるさいんだよ」いーさんがとどめの一撃を夕姫に食らわせた。

「ぐはぁああ!!!(ビチャビチャ)」吐血したっ!!吐血したような効果音だったぞ今っ!!

「僕も手伝いますから・・・作りましょうか♪」椿がもう一押し食らわせる。

「はい・・・」堪忍したのか夕姫は下を俯きながらキッチンへと向かった。

待つこと数十分。

この時間の間に幾度となく「きゃぁあああ!!」とか「え?何コレ!美味しいの?アハハハ!!」とか

二言目には崩壊しているような言動が見られたがとりあえずは出来たようだ。

置かれたのは・・・クッキーの形をしている”ナニカ”だった。

遠くから見るとクッキーに見えるが近くから見るとヘドロのような感じがする・・・。何コレ。

「た、食べてみたら美味しいよぉ!?アハハハ・・・」もうこれは夕姫ではないような気がする・・・。

涙がポロポロと夕姫から流れている。絶対涙入ってるな、これ。

対して椿は満面の笑みってのはおかしいだろ。まあそれはともかくとして・・・コレ、どうするよ?

ここは男として、幼馴染として、副会長として食わなければならないのだろうか・・・?

すると俺の目の前に一筋の手が伸びてきた。その伸ばしてきた相手は、いーさんだった。

そして何といーさんはこの何なのかわからない未確認食物を口にした。

「あ・・・」夕姫が驚いた顔でいーさんを見ている。

バリ!ガリッ!バキバキッ!ボキッ!・・・明らかにクッキーとかいう生易しいものじゃないねぇ!!?

「ふぅ・・・こんなものを奏君に食べさせるわけにはいかないからね。代わりに僕が作るよ」

といっていーさんはキッチンへと向かっていった。

軽快な音が聞こえる。音だけで素晴らしい包丁さばきだというのが分かる。美味しそうな匂いもしてきた。

数十分後・・・。

「召し上がれ。奏君、巴」

目の前のテーブルにおかれたのは和食料理だった。それもプロ並みの。一口食べてみることにした。

「・・・・うまっ!!」俺は初めてこんなに美味いものにありつけたのではないかというほど美味かった。

「さすがは姉さんっ!」とか涙ぐみながら巴が和食料理を口にしていたことはさておいて。

夕姫はもうそれは悔しがっていたが和食料理を口にした瞬間、幸せを感じ取るかのような顔をしていた。

そして・・・最終的には。

「参りましたっ!!」夕姫が降参したという。

「僕は何も勝負なんてしてないんだけど・・・ま、いいか。気持ちは受け取っておくよ」

何の気持ちか分かっているのかはさておき、どうやらことがおさまったようだ。

トントン。横から誰かに小突かれる。見てみるとそこには椿がいた。

「はいっ♪これ♪」差し出してきたのは、クッキーだった。

それは夕姫の作ったものとは違う洋菓子屋においていてもおかしくないほどの出来栄えだった。

「僕が作ったんです♪食べてください♪」と、内緒にしておいてといいたげに口に人差し指を置く椿。

その姿が可愛く見えてしまった自分を自己嫌悪しながらもとりあえず受け取っておくことにした。

夕姫は「絶対にもっと美味しく作れるようにしてやるーっ!」と憤慨していた。まあ、がんばれや。

これはとある夏の出来事のことだった。