コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 第8話:過ぎ去りし記憶 ( No.19 )
- 日時: 2010/06/06 16:02
- 名前: @遮犬@ (ID: 2v9NroYJ)
「このビビりー!」
とある男子がしゃがんでいる少女に言った。
「うえぇえん・・・・」少女は泣いていた。泣きじゃくっていた。そんな姿を俺は放っておけなかった。
俺は、その少女のことが好きだったからだ。
「やめろよっ!」俺は少女にイタズラをしている男の子3人に言った。
「なんだよっ!女みたいな名前のクセにっ!」
「夕姫をいじめんなっ!」俺は夕姫の前に立ちはだかる。夕姫は今は全然だけどこの頃は気弱だったんだ。
「コノヤロー!やっちまえぇ!」たかだか幼稚園児のケンカである。3対1。結果は見えていた。
それでも俺は守った。俺は夕姫を必死に。今となってはいい思い出に入るのかもな。
「・・・奏、大丈夫?」泣き止んだ後の声で傷だらけの俺に声をかけてきた夕姫。
この頃から夕姫の美少女っぷりといえば・・・あぁ、今はそうじゃなかったな。
「だ、大丈夫だって!俺は!夕姫は?」
「う、うん・・・ありがとう・・・」
その時の笑顔が俺は何よりも大好きだった。
「夕姫・・・っと!」ズデッとコケる。ダサい。
「奏っ!」
「あーははー!コケたコケたー!」「ダサいなぁー!」「アハハハハっ!」
この頃からだな、俺の体質がだんだん覚醒し始めてきたのは。
「そんなこといわないでっ!奏は・・・奏は私の幸せなんだからっ!」
「はぃ?」俺は今と全然変わらない口調で夕姫を見る。
「ねっ、奏!行こうっ!」気弱な夕姫が初めて俺の手を引いて走った瞬間だった。
そこで聞かされた話は今思うとわけの分からない話だと思う。
「えとね、奏の運は、私が食べちゃったの・・・」
「どういうこと?」
「私、運を吸い取っちゃう能力があるの・・・」
小さい頃だし、そんなことを微塵も信じない俺は笑った。
「アハハハっ!何言ってんだよっ!」
「ほ、本当だもん!・・・だから、私は嫌われて当然なの。奏の運を取っちゃったから」
「嫌われて当然なわけないだろ?」
「だって・・・!私、いつもドン臭くてっ!いっつも奏の迷惑ばっかりかけて・・・!この前だって・・・!」
なぜか夕姫は泣き出した。俺にはわけがわからなかった。
「だからっ!私なんて幸せじゃなくていいもんっ!」
その言葉はなぜか重く、苦しく感じた。俺はバカなり考えた。
「・・・次って確か”しょおらいのゆめ”を発表するんだよね?早く行こうっ」
俺はその時間にこういったんだ。
「俺のしょおらいのゆめは、夕姫を幸せにすることです!絶対約束します!たとえ俺の運が使い果たしたとしても!どんだけひどい目にあっても!俺は夕姫の幸せのためにがんばります!」
と、発表したんだった。それから俺は夕姫と一緒に小学校生活を送ったんだが・・・いきなりの転校。
だんだんと弱気な性格もかなり豹変して今のような性格になって人気者になった。それからの転校。
俺は絶望した。だけどそれも過ぎ去りし記憶となって現在、俺が引っ越した場所は夕姫の居場所。
偶然か、何かだとは思った。だけど気にすることはなかった。
絶望がまだ中学のときに起こった後、俺はどうでもよくなったんだったか・・・。
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「昔の話を今更どうしろというんです?」俺は冷静な目で有紀さんを見た。
「あなたしか夕姫を助けることはできないわよ」
「何いってんですか。俺に助ける?できるはずがないですよ。逆に迷惑になるだけです」
「ふむ・・・奏君は、なんでそんなにツイてないんだと思う?」
「夕姫が運を吸い取ったとかなんとかでしょ?冗談にもほどが・・・」
「それもあるけど、原因はアナタにもあるのよ」
「?どういうことですか?」
「夕姫は運を吸い取る力があるけど、あなたは逆に運を出す力があるのよ」
「俺に・・・そんな微塵もいらない能力が?」
「だからより吸い取られやすくなった。だけどアナタにはもう一つ能力があるの」
「もう一つ?」
「えぇ。すごく無理矢理にでも楽しくやれば運を集めることができる能力があるわ」
「ものすごく自己満足な能力があるんですねぇ!」
「それが夕姫があなたを生徒会に入れた理由。あなたを逆にこの後に及んで救いたいし、救われたい」
「強欲ですね・・・夕姫は」
「優しい・・・のほうがいいと思うわ。だからこうやって言ってるのよ。それをあなたはどう答える気?」
「・・・・・俺は」
「やっほー!!!!」夕姫が思い切りよくドアを開けて入ってきた。
「アレ?奏?」
俺はあまりにビックリしすぎて椅子から転げ落ちていた。
「おかえり、夕姫」
「ただいまっ!有紀ー!あっ!奏ー!椿から告白されたんだってね?」
「ぶふっ!情報早すぎっ!」
「椿本人から聞いたよー!ま、いつもの冗談だと思うけどねー!」
「冗談?」
「うんっ!半分冗談で半分本当だよー。まさかBLにはさせようとは思ってないはずだから!」
「俺だってしたくねぇよっ!」
俺は、どう受け止めようか、どう動けばいいのか。わからなかった。すでに絶望している人間に、一体
どうしろというんだ。新生徒会長にさせないと許婚にされちまうとか、幸せにさせる発言の続きとか・・・
俺は、どうする。