コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第53話:国枝 鈴音の憂鬱! ( No.351 )
日時: 2010/09/12 12:01
名前: 遮犬 (ID: 4yRqeNGS)

「はぁ……」

大きなため息が生徒会室の一人の少女の口から漏れる。

「どうしたの?ため息なんかついて」夕姫が菓子をバリバリ食いながら鈴音ちゃんに話しかける。

まずお前は聞く前に菓子食うのをやめろ。そして菓子を零すな。掃除するのは俺たちなんだからな。

「はぃ…ちょっと気になる方がいまして…」

「えぇえ!?気になる人!?」俺と夕姫が声を揃えて驚きを示す。

「それは興味あるわね…」まさかの有紀さんまでもが食いついてきた。

「どういった方なんですか?」いつもどおりの笑顔で緑茶を入れる椿。全くあの合宿での表情はいずこへ?

「んーと…ケンカが強くて、イケメンで、背が高くて、笑顔が素敵な殿方です」

「なんていうか…最強ステータスね…」有紀さんの言葉と共に俺たちもゴクリと唾を飲み込む。

「その人の名前は?」俺が鈴音ちゃんに聞いてみた。

「確か…都上っていう——」

「ふぁ〜あ…眠い眠い…」と、鈴音ちゃんの隣のほうで俺ではない男の声が。

「そうそう!こんな感じの声を…って」俺たちは一斉に鈴音ちゃんの横を見て

「「えぇえええ!?」」と、驚愕の声を上げる。

「…ぅん?どうした?」確かにイケメンなその男は眠たそうな目で俺たちを見てくる。

「どうしたじゃないって!てかこの人が都上っていう人?」

「あ…はい」鈴音ちゃんが少し顔を赤くして答える。

「え?俺がどうかしたの?…おっ、お前確か昨日の?」

「あ、あ、えと、その…あ、はい…」鈴音ちゃんの恥かしがっている姿は初めてだった。

しん?都上ってやっぱり沁のことだったんですね〜」椿が笑顔で告げる。

「あぁ、椿。来てやったよ。お前がいきなり呼ぶから正直驚いたけどな」

「え?二人共知り合い?」

「知り合いというか…友達ですかね?」

「親友の間違いじゃないか?」沁がその魅了するような笑顔で言う。

「え、えぇええ〜!!」鈴音ちゃんが同時に驚き&悲痛の声をあげた。




「…それで?椿は何のために都上をここに呼んだんだ?」落ち着いて全員座りながら話をする。

「えとですね、沁に風紀委員長になってもらおうと思って呼んだのです」

「え、そんな権限俺たちにあったのか?」

時雨咲高校では生徒会が他にも存在するために仕事が各生徒会ごとに分担されている。

だがその分仕事は学校行事大体のことを示し、つまり教師楽々天国ということである。

「はい♪今回の仕事はまだ決めていない風紀委員長を決めることなのです♪」

「初耳だな…」俺ら全員の仕事だというのに椿しか把握していなかったとは…。

「また風紀委員の話か?だから俺はやらないって」頭をかきながら都上は面倒臭そうに言う。

「沁ほどの適任者はいませんよ?それに女性からの人気も高いじゃないですか」

「え?そうなのか?知らなかったけど…とにかく俺はやらないって」

なんていうかこの場にいる俺が一番腹が立ってきた。なんでだろうな?

「奏君?顔が鬼のようになってますよ?」椿がニコヤカに俺の顔を指摘してきた。

「あぁ、ごめんごめん。つい…」俺の感情がどうやら顔に出ていたようだ。危ない危ない。

「まあ…女性の人気とかは沁にとっては意味はないと思いますけどね♪」

「どういう意味だ?」一応俺が聞いておく。あ、別にそんな怖い気持ちはないよ?

「俺は一途だからな」都上が笑って言う。

「え、えぇええええ!!?」鈴音ちゃんの驚愕の声第二弾。

「なんていうか…その、残念だった…ね?」夕姫が苦笑しながら鈴音ちゃんを慰める。

「ど、同情なんかいらないですぅうう!!うわぁああああん!!」

微妙なツンデレと共に涙ながらに生徒会室を出て行く…のではなくて隅っこのほうにいった。

さすがは影が薄い鈴音ちゃん。最近は改善されてきたみたいだがまだまだここらへんがダメだな。

「…っと、もうこんな時間か…じゃ、俺病院行くから」

「病院?」一見どこもケガはしていないし体調も悪くない。

「あぁ、永瀬ながせさんのところに行くんですね?」緑茶をすすりながら椿が言う。

「永瀬?」

「ずっと入院している女の子ですよ♪」

「え、じゃあ…?」俺と夕姫と有紀さんが沁の顔を見る。

「ん…いや、そんなんじゃねぇよ。あいつの話し相手がそんなにいないからな…」

少し顔が暗くなった気もしたがすぐに普通の表情に戻る都上。

(ああみえてかなりのお人好しなんです♪沁は)と、耳打ちで俺たちに椿が教えてくれた。

(まあそれだけの理由じゃないと思うんだが…)俺はそう思いながら茶をすする。…うん、ぬるい。

「じゃあな!えーと…暴風警報だっけ?仕事がんばれよ〜!」そしてすぐに姿が見えなくなった。

「…鈴音ちゃん?」俺たちは鈴音ちゃんのほうを見るといつの間にか携帯ゲーム機を取り出していた。

「ふふふ…もうこうなったらやり込むしかないです…」とかいって影の薄さ倍増していた。

(こうなったら鈴音ちゃんはクリアするまで終わらないな…)

そう思った俺たちはため息を一つついて何か仕事はないかと探し始めるのだった。