コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第55話:あれ?何この展開 ( No.392 )
日時: 2010/11/14 20:29
名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)

俺は自分の入れた苦い緑茶に顔を濁らせつつ、誰かくるのを生徒会室で待っていた。

「あ、もういたんですか?」

「もうって……鈴音ちゃん、君は時計が読めないのか?」

そういって時計を指指す俺。
時刻は部活動開始やら何やら開始から40分ほど経過していた。

「あぁ、そうでした! 奏君は体育祭の何の関係もないですもんね」

「その言われよう! 何か腹が立つんですけどっ!?」

何の関係もなくはないだろ…まあでも、一応本当のことか。

「今日はクラスで色々と決めないといけないから遅れたんですよ?」

鈴音ちゃんが持ち前のバッグを下ろして、キョロキョロと辺りを見回す。

「…あれ? 皆さんは?」

「知らないよ。多分鈴音ちゃんと同じような理由だろ?」

俺はそう言いつつも緑茶を一口。……うん、苦い。

「ということは二人きりとかそういうアレですか?」

いきなり鈴音ちゃんが変な顔して俺の方を凝視してくる。

「……アレって何?」

「な、あ、いや! な、なんでもないですっ!」

そういって鈴音ちゃんパタパタと足音を鳴らしながら自分も緑茶を入れ始めた。

「……に、苦い……」

そして俺と同じ感想を述べる。まあ、だろうな。

「緑茶って素人が入れたら苦くなるものなのか……?」

半信半疑な目で俺は自分の入れた緑茶を見る。
椿が自前で持ってきたであろう季節外れの桜の書いてある茶碗に自分の名前の象徴である奏が書かれている

鈴音ちゃんは苦い感想を言った後、無表情で自分の指定されている席へと落ち着く。
そしてしばしの沈黙…。

(……あれ? これ……なんだろう)

俺は、ふと鈴音ちゃんの顔を凝視してしまう。
その俺の目線に気付いた鈴音ちゃんは顔を赤くし、別方向に顔を逸らした。

(こ、これはっ!!)

いや、まて…落ち着け、篠原 奏…!
何だ、この、その、気まずい展開はっ!てか何で鈴音ちゃんも顔赤らめるんだよっ!
これ…これってもしや…?ラブコメ的展開!?んなアホな…。

考えを試行錯誤した俺はとりあえず平静を装うことにする。

「……」

「……」

二人、沈黙。

(うわああああああ!! クソ気まずいいいいっ! 何だコレっ! 嫌だよっ! なんでここで……!!)

あまりの気まずさに参った俺は咄嗟に話題を出そうとした。

「「あのっ……!」」

(なんで被るんだよぉおおおお!!)

鈴音ちゃんは俺と声が被ったことで、より顔を赤らめている。いやいやいや!!まてまてまて!
どうしてこんなことになってんだ!フラグいつの間にか立ってるんじゃないだろうなっ!
てかいつも通りにゲームいじってればいいのに…!?

そこで鈴音ちゃんがとあるモノに目線を移していた。

それは、俺の茶碗。

「……(満面の笑み)」

(なんでだぁああああああああ!!)

俺は心の中で葛藤を繰り返す。いつの間にか着ているシャツ等も汗まみれだぜっ!
なんていうか…その、俺の何かがこう、何だろうな!変に燃え上がってきたぜっ!(おかしくなってます)

俺はそこまで試行錯誤した後、いきなり立ち上がる。

「……え、えっと?」

鈴音ちゃんがいきなりの俺の行動に顔が赤らめつつも言葉を漏らす。

(ダメだ……! 篠原 奏! 煩悩に負けるんじゃない! 落ち着けっ!)

「ふぅー…!」と、大きく、力強くため息をした後

「と、トイレ行って来るよっ!」

あぁ、何でこんなことしか思いつかなかったんだ、俺は。
思いながらも大急ぎでトイレへと向かう。
後ろの鈴音ちゃんがいる辺りから「あの……!」と聞こえたがそれらを聞かないフリをして逃げ去った。




(一体なんだったんだ……)

辛くも逃げ切った奏はため息を吐きながら廊下を歩いていた。
鈴音ちゃんの様子がおかしかったというかなんというか。
それよりも、椿の姿を探さなくてはならない。都上の件があるからな。

「やれやれ……」

クラスにまだいるのかもしれないと思い、1−2へと訪れた。
だが、そこは閑散としており、誰もいない無人化となっていた。

「あれ……? どこにいるんだ?」

他に心当たりがないかその場で考え始める。
…ダメだ。心当たり、全くない。

しばらくその場で唸っていると、

「……あの?」

「ん……?」

いきなり横から話しかけられた。
話し声がした方向を向いてみると、袴を着て、綺麗な外国の人形のような顔をしている女の子が一人。

「……なんでしょうか?」

とりあえず聞いてみた。

「あ、私、霧条・アレクセイエフ・智代っていいます」

妙にカタコトなのはハーフだからか。納得。
て、待て。そのハーフさんが俺に一体何のようだ?

それも見ると格好は袴、手には弓、背中には弓矢が何十本とある。
どうやらこの人、弓道部のようで。

「……何かお困りですか?」

「はい?」

いや、いきなり…。お人よしなのだろうか?

「困ってるっちゃあ困ってるけど……たいしたことじゃないから、大丈夫だよ」

「困ってるのですかっ!?」

え、いや。そんな大層な驚き方しなくても。

「いや、だから——」

「ならお助けします! 命に別状はないですか!?」

「そんな重傷なお困りはないよっ!!」

俺がそういうと、霧条なんたらかんたらは呆けた顔をした。

「え、そうなんですか? んん……日本語、難しいです」

と、本気で悩んでいた。
……こんなキャラ、この学校にいたんだなぁ、と思いながらも逆にこの学校だからいるのかもしれない。
そう思いなおすことにした。そして、俺は開き直り、こう聞いてみた。

「体育祭の話とかしてる人たち知らないか?」

知らないだろうが、そう思っていたが
言ってみるもんだった。

「あ、知ってますよ! 第23生徒会室で話ししてます!」

どんだけこの学校生徒会室あるんだよ…。

「あ、あぁ、ありがとうな? えっとー……」

「霧条・アレクセイエフ・智代です」

「あぁ、そうそう。ありがとうな」

いちいち言っているとどうやら噛みそうだったのでやめておいた。
別れを告げてその場から去ろうとしたら

「……何の真似?」

霧条が俺の腕の裾を引っ張っていた。

「私もいきます。頼まれたんです」

「は? 誰に?」

「禁則事項です」

どこぞのアニメの真似だよ…。と、心の中で呟きつつも渋々了解するのだった。