コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第57話:桜月 夕姫の自責念! ( No.401 )
日時: 2010/11/24 13:25
名前: 遮犬 (ID: XvkJzdpR)

そんな一方。
生徒会暴風警報会長である桜月 夕姫本人は生徒会の仕事はさておき、ある場所へと来ていた。
その部屋はものすごい広さを誇り、中は数々の衣装たちが我が物顔でおかれている。
ここは衣装室と呼ばれるものであった。
何故こんなものが学園内にあるのか。それは"とあるイベント"のおかげだった。

【学園内ミス・ユニバース美女、美少女コンテスト】と呼ばれるものであった。

体育祭で生徒会仮装リレーがある。
それは仮装リレー。つまり……
今時より、既にミス・ユニバースの戦いは始まっているのである。
仮装リレーの時で可愛らしさや美しさをアピール。そして着替えて別衣装でとどめ。
後は男全員の投票で全てが決まる。女子は何でも皮肉などがあるかもしれないので投票は無いらしい。

「ふぅ……あー、それにしても何着ればいいんだか……」

大勢の談笑しながら衣装を選んでいる見た目綺麗な女生徒たちを見ながらため息混じりに言うのは夕姫。
夕姫はこういうことには慣れていなかった。
実際こうやって一番を比べたら自分が一番になると思うけどね、とは思うのだが。
積極的に行動に移れない。どうにもこうにも好かなかった。

「どうしましたか? すごく可愛い衣装ばかりですよ? 会長さん♪」

と、衣装を何着も持った椿が可愛らしく夕姫に話しかけてくる。

「あぁ、なんだ。椿か〜……。……ちょっと待った」

夕姫がガッチリと椿の肩を手で掴んだ。
その様子に「はい?」と、首をかしげて夕姫を不思議そうな顔でみている。

「アンタ男じゃなかったっけ!?」

平然と、当たり前のようにいるが椿は実質、男である。
さらにここは着替え室という服屋においてあるのもあるが男子禁制の場所のはずだった。

「何だか皆さんが椿君なら全然おkよ? 見られても全然気にならないしって言ってくれていたので……」

どうやら椿はもうすでに女性と認識されているらしい。
男といわれても全く実感がないというか、男だと可愛らしすぎておかしいだろ、という感じだそうだ。

「まあ……そうかもしれないけど……実際椿は本当の女の子なの?」

「? 何いってるんですか? 男ですよ♪」

柔らかい笑みを浮かべて平然と男子禁制の場で男宣言する奴。
これが奏だったらと考えると……罵倒の嵐が思い浮かび、咄嗟に夕姫は想像をやめた。

「服、選ばないんですか?」

次に夕姫の元に近づいてきたのは、花園 郁であった。
奏に告白したが、それは佐野 アリスの計画だったと言った郁。
何の情報を握られているのかは知らないが、それが郁にとってはよくない情報であることは明らかである。
腹違いとはいえ姉にあたるアリスが脅迫まがいで手伝わせたことを今でも郁の顔を見るたびに思い出す。
それは椿も一緒で、仮の話だがアリスのこれでも婚約者にあたるものである。
二人は郁に謝って謝りきれないほどの念を抱いていた。

「郁ちゃん……? 貴方ももしかして出るの?」

夕姫の驚いたような口調で笑顔で大きく頷く郁。
どうやら大分吹っ切れてはいるようだが、まだ悩める原因である。

「はい! 私も出ることにしたんです! それで、その……ユニバースになって……願いを……」

だんだんともじもじしながら声を鈍らせていく郁。その姿を見て夕姫はやっと思い出す。

「願いって……確かミス・ユニバースに選ばれたら願いを一つ叶えてくれるとかいうあれ?」

それはもはや噂同然だった。だがしかしその噂は本当ではないかと最近言われ始めたのである。
去年やその一昨年のミス・ユニバースはその後、好きな人と付き合うとかいう願いをした結果
見事成功したらしいし、その前のミス・ユニバースは食い放題スイーツ券とか勿体無いことを言い、
その一週間後、ものすごく腹の出っ張ったミス・ユニバースの姿。
聞くと「食い放題ってつい食べ過ぎちゃうのよね……あ、いっちゃダメなんだった」とかなんとか。
そんなことで、願いを叶えてくれるとかいう一種のおまじない的なものは本当のようであった。

「はい。最近その話題で持ちきりですよね?」

郁のその言葉で夕姫は数秒考える。
そしてもう数秒後には既に行動に移していた。

「やるわっ! 私、ミス・ユニバースになってやるっ!」

「「え?」」

思わず椿と郁は同時に声をあげてしまった。
それぐらい唐突だったのである。
棚に頬杖ついてボーっとしてやる気無さそうな感じため息を吐いていた奴が
いきなり、唐突にして衣装を選びだす様。

「僕も手伝いますよ♪」

そんな夕姫につい、声をかけてしまっていた椿。そして郁までもが「わ、私も!」と、手伝いにくる。

夕姫は思った。この願いがもし叶えられるのだったら、叶えて欲しいと。
自分が昔起こしてしまった過ちを、罪を、償ってほしいと。


——姉さんと、奏が昔のような関係に戻れますように、と。


夕姫は、自分が幸せを取ったのだとずっと思っていた。
それは今も変わらない。ずっと後悔している。
だから、自分には人の幸せを奪い取る力があるんだ。そう思ったのだ。
そしてそれは奏にも降りかかり、幸せを吸い取ってしまった。
本当に好きな子じゃない自分に告白してくれた奏はとてもかっこよくて、強そうで、頼れたのである。

そんな奏に、私は——

考えをやめる。こんなことしている暇があれば、自分にできることをしなければ。
その罪が償われたら、自分は……どうする?


後悔という感情の波で、自分の本当の気持ちを捉えられずにただただ押し流されていくのみであった。