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Re: 憂鬱week! / ( No.108 )
日時: 2010/08/10 18:22
名前: まち ◆05YJ7RQwpM (ID: xixMbLNT)



 私嫌いな人が居るんです。
 そんな風に打ち明けたって、誰も私の声なんて拾ってもくれなくて。馬鹿みたいとか私はまた笑うのです。
 「恵美ってかわいいよね」
 私のことを言っている子が居る。ああこの子か、この子は誰かに好かれようとがんばっている子。そうやって人を喜ばせる言葉を淡々と並べて人を寄せ付ける、だからまわりにはよい子、嘘つかない子、なんて良く思われて。ああなんでみんなこの子の裏を知らないんだろうか、と思いながら私はこの子の言葉に返事をしておく。
 「ありがとう、佐藤さんもかわいいよ」
 私がそういうとこの子はにっこりと笑う。そしてありがとうとまっさら嘘な返事を返す。
 
 「おい、原野、これどーするんだよ」
 私を呼ぶ声がする。私が振り向くと、ああこいつか。私は分からないようにため息をついて「どれ?」と笑顔で聞く。
 ほうらみんな私の笑顔に騙されちゃって。馬鹿みたい。
 こいつはあからさまに私に好意を寄せていることをアピールしてくる。正直鬱陶しい。まあ好意を寄せられることは価値的には結構あるけど、私にはこいつの好意は鬱陶しくてしかたがないのだ。
 「ありがとう。松田君、助かるわ」
 「いや、別に」
 とまあなんて素っ気無い返事なの、とか思うけど私にはそんなのどうだっていい。米粒みたいだから、こいつの声なんて。枯れちゃえばいいのに。

 みんな大嫌い、大嫌い。
 嘘ばっかり、だからいやなのよ。もう大嫌いなんだからね。私がそう心の中でつぶやいたって、叫んだって聞こえない——。

 「僕もだよ」
 私の背後から声がした。私が後ろを向くと同じクラスの鈴木が立っていた。そして、もう一回「僕もだよ」と言った。


 ……おかしな物語の始まりだったりしてね。
 私はにっこりと笑って「何のこと?」と言っておいた。

 

 ( 嘘の二乗 )