PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: メランコリーハート / ( No.126 )
- 日時: 2011/03/28 16:46
- 名前: まち ◆05YJ7RQwpM (ID: CW6zBFcM)
お隣さんは私の大好きなおにいちゃんが住んでいる。
私と二つ離れていて、一人っ子の私にとってはおにいちゃんだった。
でも、私が中学生になり、一緒に帰ろうと約束したのにおにいちゃんは、彼女と帰ってしまっていた。
サラサラの黒髪、かわいい顔立ち、そして同い年。なにもかもが羨ましかった、私はおにいちゃんには追いつけない、そう知った瞬間だった。
私はその日から「おにいちゃん」と呼ばなくなった。
おにいちゃんは、私とおにいちゃんの壁を作っているように感じたから。それからは、「祐君」と呼ぶようにした。
でもおにいちゃんはそんな変化にも気づかなかった。
結局呼び名ひとつ変えたところで壁が壊れるわけもなく、おにいちゃんはすぐ受験勉強に入ってしまい、壁はよりいっそう高くなった。
夜遅くまでおにいちゃんの部屋からは明かりがもれている、昔はよく遊んだあの部屋がものすごく遠く感じられた。
試験の当日の日、私はおにいちゃんが出てくるまで家で待っていた。不器用ながらがんばって作ったお守りを渡すために。
おにいちゃんはぐるぐるとマフラーを巻いて家から出てきた。
私も同時に家を出て、おにいちゃんを呼びとめた。
「がんばってね」
その一言を言うのが精一杯だった、白い息を吐きながら。
おにいちゃんは、にっこりと笑い私の作ったお守りを受け取った、そして「ありがとう、がんばってくる」と言って、お守りを胸ポケットにしまった。
そして私の頭をぐしゃぐしゃするように触って。
「早く、俺に追いつけよ」
私より早く成長し、私より早く進学して、私より早くいろんな事を経験して。
ただただ追いつけない悔しさが募った、そんな冬の日だった。
( 成長 )
PR
