コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱week! / ( No.98 )
- 日時: 2010/08/06 11:31
- 名前: まち ◆05YJ7RQwpM (ID: xixMbLNT)
そっと彼が私にキスをした。
真っ白な病院で病院らしいにおいを漂わせている、彼はもう長くはない、そう彼の親に聞かされたときに世界が真っ暗になった。
私と彼は小さいころから仲がよく、よく遊びに行ったりしていた。しかし彼は体が病弱で一回発作が起きると何週間、何ヶ月と病院に居なければなかった。
だから彼は学校も休みがちで、たまに行くと友達も多いから笑ってるけど、病室では静かに本を読んでいた。
私がいつものように病院に寄ってプリントを届ける、そんなのが日常になっていて。私は毎日のように病院に行っては学校であったことをしゃべったり、彼が面白い話をしてくれたりした。
高校に彼は進学したものの、学校には入学式に出てまた体調を崩してしまった。私と彼は同じ高校に入学し、私はまた彼のところに通っていた。
一回しか着てない新品に近い制服がかかっている。彼は一回しか袖を通していない。
「……なあ、梓」
彼がその制服を見ながら私に話しかけた。
私はシャリシャリとりんごを剥きながら「何?」と返事を返す。そうすると彼はそっと指を制服のネクタイに向けた。
「お前のネクタイくれないか?」
彼の目は寂しそうだった。
「なんか、梓のネクタイは学校に梓と一緒に行ってるだろ? だから」
私がネクタイをはずすと彼は何も言わずに受け取って、ぎゅっと握り締めた。私は立ち上がって彼の制服からネクタイを抜き取る。
男の子用だから、少し女の子用と形が違う、でも私はネクタイを結んで、彼に見せた。
「どう? 似合う?」
そうすると彼はまぶしそうに微笑んで「似合うよ」と笑って私を呼んだ。
私が不思議そうに顔を彼に近づけると、触れるか触れないかわからないくらい、もうかすれるくらいかのキスをした。
「……瞬?」
「……最初で最後だ」
彼の言っている意味がよく私はわからなかった。
ただ彼の細い腕を握り締めることしか出来なかった。
そして、翌日。
彼は、死んだ。
( 消えた唇の感触 )
