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Re: 神より生まれし花‐真実は何処に…‐ ( No.12 )
日時: 2011/04/23 22:22
名前: フレイア ◆7a0DWnSAWk (ID: HPru.2N2)

<第8話:謎の魔法師>


その頃、医療舎にて。

執務室の扉を誰かがノックした。


「はい、どうぞ。」

雪に関するカルテを書いていたカイトは、現れた人物に笑みをこぼした。

「…久しぶりですね、星羅。」

星羅(セイラ)と呼ばれた女性はにっこりほほ笑むと、かぶっていた帽子を脱ぎ、近くにあった椅子に座る。

「本当に久しぶり。どう?医者の仕事は?」

「まあまあ順調にやっているよ。セイラはどうだい?体の方は。」

「…だいぶ良くなったわ。」

「…そうか、それは良かった。君が倒れていると、君の娘であるコウセが心配するからね。」

「えぇ。…星一族の力は強いけれど、使うのにはかなりの体力がいるから。…今の私は特にね。」

「…で、君がここに来たということは、他に何かあるんだろう?」

「えぇ、そうよ。予知夢で今朝、かわいい女の子が来る夢を。」

「雪のことだね。」

「雪ちゃん、ね。コウセ達は?」

「今、図書館で古文書を探しているよ。」

「あそこ、闇禍が住み着いたって聞いたわ。大丈夫かしら…。」

悲しそうな表情でセイラはつぶやく。

「大丈夫さ。上級魔法師のフウイもいるのだから。」

「…そうね。そうだわ!帰ってきたら、お昼にしましょう。」

「おや、もうそんな時間か。」

「雪ちゃんも一緒に来るように、言っておいてくれるかしら?」

「もちろん。君の料理はおいしいから。」

「あら、冗談がお上手ね。……!?」

「…どうかしたかい?」

真剣なまなざしで、カイトはセイラをみる。

「この禍々しい感じは…闇禍?!」

「どこにいるんだい。」

「上…。個室に入ってくる!!」

「…雪が危ない。僕が行くから、君は長官…焔蘭(エンラン)を呼んでくれ!」

「一人じゃ危険よ!」

「時間を稼ぐだけだから。心配いらないよ。」

「…、分かったわ。でも、約束して。」

「蓮翆(レンスイ)…君の友であり、僕の妻の時のように…死なないように。……違うかい?」

「…お願いね。」

「ああ。」

カイトは、急いで雪のいる個室へと向かった。






そして、ムエン達は…


「くそ…どうすりゃぁいいんだ…!」

ムエンは痛む体に鞭打って立ち上がる。

「ムエン…!」

「立つので精いっぱいだ…。動くだけで痛みが倍増する…。」

ヒナとフウイは立とうとしているが、うまくいかないみたいだ。
かく言う俺も、フラフラだ。

闇禍は、俺らを見るのに飽きたのか、漆黒の影を剣のように鋭くし、俺に切りかかった。

集中出来ねぇ…。

技を出そうにも、痛みで集中できない。

闇の刃が俺を貫く………はずだった。


「『大地の響き、共鳴せよ』…ロック・ウォール。」

地響きが起こったかと思うと、俺の前には分厚い壁が存在していた。

何が…起こったんだ???

無論、闇禍の攻撃は受け付けず、跳ね返る。

「はぁ〜あ、君たちが図書館から出てくるまで待っとこうと思うたんやけど、しゃあない、か。」

後ろから妙なおっさんが出てきた?

野球帽みたいな帽子、サングラスかけてるし。

手には、扇が握られている。

「…お前、誰だ?」

「うっわ〜、失礼なガキ。もうちょい敬語使いや?仮にもワイは元上級魔法師やからなあ。」

「って言われてもなぁ。…わっ!!」

不意に、謎のおっさんが俺を突き倒した。

「なにすん…」

「君、あのままやと死んでたで。ええか?」

「…。」

返す言葉もない。実際あの壁で助かった。

「……さて、この類の闇禍はな、一気に勝負を決めな、あかんねんで?」

「って、一気に出来んのかよおまえ!」

「そんだけ喋れたら元気やな。そりゃ、上級魔法師なりたてのフウイ君は無理や。」

笑いながらサラっと言ったぞ…。

「てか何で俺らのこと…」

「おっと、お喋りは後や。いくで!プレッサー・ロックリング!」

俺の前にあった壁が、音を立てて崩れたかと思うと、土砂崩れが起こったかように闇禍に向かっていった。

「ギャアァァァァァァァ!!!」

俺らが与えたときよりも甲高い悲鳴をあげて、一気に消えた。

「き…消えたのか…?」

「はーい、完了や♪」

「ヒナ、コウセ、フウイ。大丈夫か?」

俺は、まだ痛む体をなんとか動かし、仲間の無事を確認する。

「俺はなんとか。」

「私も。…まだ熱いけどね。」

「大丈夫。」

「さぁて、古文書はどーこかなぁ?」

軽い足取りで探すおっさん…って!

「おっさん、ちょっと待った!」

「はい?なんや?」

聞きたいことがいろいろあったが、まずは…

「おっさんは何者だ?何で俺らのことを知ってて、俺らを助けたのか。」

「決まってますやん。仲間やから。」

「…怪しい。」

「せやかてなぁ…?」

「古文書のこと、何かご存知のようだが?」

フウイは警戒を解かずに、おっさんの方を見る。

「いや?なんも知らん。けど、君らには必要なんやろ?」

どこまで知ってんだ…。

「確かに必要だけどな…。」

「せやろ?…お。発見〜〜。」

おっさんは一冊の本を取りだした。

古びて、表紙は読めないがずいぶん昔からあったのだろう。

「ほな、連盟所にゴーや!早くに行かな、エンランちゃんは怖いで〜。」

「エンラン…、長官の名前。」

「てことは、長官の知り合いなの!?」

「まあな。ほら、はよはよ!」

妙な魔法師に引きずられて出た俺らは、なるべく早く連盟所に戻っていった。