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ボリュームスリー

「リンネリット=メルサ…?」

そんな、馬鹿な。

確かに遠くで、声は聞こえている。

「しぃー!しぃぃ!!!」

「んぐっ!?」

口を思いっきりふさがれた。

息ができねぇぞ、このやろう!

「っっぷはぁ、や、めろ、てめぇ!!」

やっとの思いで振り切って、相手をにらみつける。

「へ?」

目の前の女はきょとんとしていた。

はん、どうせ自分を見て感激しない男ははじめて見たってとこだろ。

嫌な女だ。

「あぁ、ごめんね。ごめんなさい。」

「…」

「ごめんなさい。見つかると大変なの。」

見つかる?

「…はぁ？」

「あ、えっと、ごめんなさい。」

さっきから謝りすぎだろ、こいつは。

「とにかく、ここであったことは内緒にしてほしいの。」

なんだ、こいつ。

いきなり人を窒息させておいて、黙ってろだ？

やっぱり高飛車で自己中な女で間違いなさそうだな。

「興味ねぇよ。とっとと失せやがれ。目障りなんだよ。」

その辺に石でもあったら投げてやってたところだったが、無かったのでそれはあきらめた。

「え、…あ…。」

生まれてこのかた、褒められることしかされなかったお嬢には、きつかったか？

泣かれても迷惑だな。

このまま立ち去るとする、か。

「まって!!」

「!?」

はぁ？

「まって、あなた、私にそんなこと言うなんて…」

「あぁ？なんだよ。文句あるか？お・嬢・様。」

「違うって!そうじゃなくて!あなた、面白い人だね!」

「はぁ？」

ますます訳がわからん。

「私にそんなこと言ったの、あなたが初めてだよ!!」

「そりゃぁ、そうだろうな。もういいか？」

「だめぇ!!ねぇ、あなた名前は？」

何だこの女。

「うるっせぇな、何なんだてめぇ。」

「ほら、また!!あなた何者？今までに見たことない!!」

「あたりめぇだろ、鬱陶しい女だな!」

無理やり振り払って逃げるようにして立ち去った。

あぁあ、かっこわりぃ。

後ろで、引き止める声がした。

なんだ、あいつ。

イメージとぜんぜん違うじゃねぇか。

しかも、増音機からはまだ声が聞こえる。

影武者？双子？

いや、そんなことより問題は、





この動悸の理由だ__________。



本当に、何だって言うんだよ、一体。