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Re: ツギハギだらけのワンピース ( No.3 )
日時: 2010/06/10 21:00
名前: 涙兎 ◆I0wh6UNvl6 (ID: w62UqG.W)
参照: 涙兎/ると 11歳/♀ 友達募集中

01:number1☆supergirl



「雫・・・・。」
ばぁちゃんの涙で真っ赤の目を見ていても、ちっとも悲しくない。

あたしを心を込めて育ててくれた、じぃちゃん。
ありがたいコトだった言うけれど、あたしにはちっともわからない。

でも、あたしは1つだけ覚えてる。
じぃちゃんがあたしに教えてくれた言葉。


「なっち、お前は『ありがとう』をわからないけれど・・・いつかきっと『ありがとう』の意味がわかるようになる時が来る。
だから自信を持ってこう思え。

・・・自分は、世界一、ナンバー1!何をやったってできる、スーパーガールなんだって!!」


どんな意味か、どんな思いをこめたのか、さっぱりわからなかったけれど
あたしはできる子だっ!!って認めてもらった気がした。
何か、心が躍るような不思議な感じがした。

だからすっごく覚えてるんだ。



クラスの子にからかわれても、何も思わないけれど・・

どうして、あたしを笑うの?

あたしのどこが、おかしいの?

あたしが、何かしたって言うの?


そんなたくさんの疑問がわいて出てきた時、

「そうだ、あたしはできる子なんだから・・・何をやったってナンバー1なんだから!!」

って心でつぶやく。
そうすると、どこか落ち着いて楽になる気がして・・・
あのたくさんの嫌な疑問から、解き放たれたような感じがして・・・。


「なっち。」
ふいに、誰かによばれた。
でも、まぶたが開かない。

「なっち。」
またよばれた。
これは、ばぁちゃんだ。

しばらくして、重いまぶたがやっとあいた。


これは、夢だったんだ。
先週のじぃちゃんの葬式の時の、心の中がそっくりそのまま夢に出てきてる。

「じぃちゃん。そう、じぃちゃんがいたの。」

心ではわかってることも、頭の中をぐるぐるかき回して探さないと
ぴったりの言葉が思いつかない。

「じぃちゃん・・・かい?」

「うん、じぃちゃん。あたし、じぃちゃんといた。」

もう、のどのその辺まできてる。
でも・・・頭がまわらずに口があかずに、そのまま時が流れてく。

「あぁ、ゆんめ・・見たんだろう。」

「あたし、じぃちゃんとゆめ。」

「そうかぃ、そうかぃ・・・それはよかたなぅ。」

ばぁちゃんのしわがれた声は、あったかくて心がやすらぐ。
そう、ゆめって言いたかった。夢って。

心ではわかっていても、言葉に変換ができない。

まるで、あたしは変換ボタンのないキーボードのようだ。
変換しないと、言葉というものにはできない・・・みたいに。


でも、スーパーガールにできないことはないから。
何事も挑戦だってじぃちゃんは言ってた。

「ほれ、朝ごはんだよ。」

むくりとふとんからはい上がって、のそりと食卓に向かう。

何事も挑戦だ、でも無理はしてはいけない。
それは挑戦ではない、無謀だ。

こんなことも言っていた。
じぃちゃんとの会話は、今でもたくさん記憶に残ってる。

そう、無謀だから・・・。無理せずゆっくり歩くのだ。