PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕の涙腺を刺激するもの ( No.160 )
- 日時: 2010/10/17 15:21
- 名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)
第16章 「決して交わらない心と心」
風がだんだんと無くなって来た。
昼の時など、背中にうっすらと汗が滲んで来る位暑さが増した。
過ごしやすい季節の象徴、春が、そろそろ終止符を打とうとしている。
夏がやって来る、と、一琉は思った。
そんな時、あの人は珍しく学校を休んだ。
「じゃあ、欠席は泉だけだな。」
一度伊吹に自分がしているせこい行いを指摘された担任教師が、出欠名簿を片手に言った。
あれから少しは大人しくなったんだよなあ —————……。
と、どうでもいい事を考えていたのだが、その考えは打ち消された。
(伊吹が、欠席……? )
自然と、自分の目が見開いているのに、一琉は気付かなかった。
————— 伊吹自室 —————
「伊吹、本当に大丈夫か? 」
兄、響貴が僕の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫だから……。兄貴、早く仕事行けよ。今日はスケジュールびっちりだって、吹雪兄も言ってたよ。」
「でも……。」
「大丈夫だから。」
兄貴の言葉を遮り、僕は言った。
兄貴は納得していないような顔をしていたが、後から浅く頷き、僕の部屋から出て行った。
————— 兄貴が家から出たのを確認すると、僕は大きくため息をつき、ベッドにうつ伏せになった。
昨日のあの酷い頭痛が、なかなか治まらなかった。
それで、今日は学校を欠席した。
母も父も、兄二人もとても心配していた。
だが全員仕事があり、キャンセルする訳にもいかず、
やむを得ず仕事に向かったのだが、兄、響貴が一人、ここに残ってくれた。
兄貴は今、大人気のアイドルだ。
僕の体調不良で大事な仕事を休ませる訳にはいかない。
今日は自分一人で、自分の部屋で療養だ。
PR