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Re: 僕の涙腺を刺激するもの  ( No.161 )
日時: 2010/10/17 15:22
名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)

帰り際には、昼間の暑さは消えていた。

だが一琉の頭は、別の事で大半を占められていた。

それは、伊吹が学校を欠席した事だ。

(伊吹、大丈夫かなぁ……。)

よく言えば、今は季節の変わり目だ。
体調を崩すのも無理は無い。
だが、一琉はその様な事を心配している訳では無いのだ。

(もしかして、『フラッシュバック』が今になって起きている……? )

一琉は頭を抱え込んだ。

「もうすぐね……。」

苦い衝動が、一琉の中から湧き上がってくるのが分かった。
その『衝動』は、一琉にとってはいいものではなかった。
逃げ出したくなる、そんな、まるで闇のように嫌な感情だ。


そんな嫌な感情を振り切り、一琉は意を決した。

伊吹の見舞いに行こう、と。






















————— 伊吹自宅前 —————

「ここに来るのは久しぶりだな……。」
一琉は、伊吹の自宅前に立って居た。

住宅街から少し外れた場所にある、荘厳で大きな、だが贅沢はしていない、控え目の家。
知的さが溢れてくる、モデルハウスのように綺麗な家。

庭も、門も大きいのに、あの時も昔も変わらない。


















————— ゆっくりと、前に進み始めた時だった。

ドサッ!!

と、大量の荷物を勢いよく落とす様な音が、一琉のすぐ傍で聞こえた。

驚いて一琉は、その音がする方向を見た。
























「一琉ちゃん……!? 」

音の主は、伊吹の母、泉杏香だった。

一琉は杏香を見て、優しくも悲しい笑みを浮かべた。

「お久しぶりです。杏香さん。」

一琉のその言葉に、杏香は苦しそうに顔を歪めた。

まるで、苦い過去に体験した嫌な思い出が、頭の中で蘇えって来ている様だった。