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Re: 僕の涙腺を刺激するもの  ( No.185 )
日時: 2010/10/17 15:28
名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)

第18章 「衝撃と共に、僕が知った事」



深夜2時。ふと、僕は目覚めた。
昼間から寝たのだ。この時間に起きてしまうのは当たり前なのかもしれない。

果たして、どうすればいいものか。
もう1度寝る気力と睡魔も無いし、かと言ってこんな夜中に何かをして家族を起こしてしまうのも、僕の良心が痛む。

兄2人は、音楽番組の収録、雑誌のインタビューなどを受け、その後グラビアの撮影。で、その後トーク番組の生放送。夜に深夜番組の収録。朝から夜1時まで仕事をして来て、疲れ果てた体を休めようと寝室で眠っている。

母は、今日新作のドレスの発表と、パリコレに出るモデルのファッションの打ち合わせ。そして、今度制作する化粧品を決める会議。

父は、映画の記者会見に出る有名女優のスタイリング。大手芸能事務所のタレントや専属モデルのヘアメイク。雑誌取材を五本程受けた。

いつの間にか頭痛が治まった頭を抱え、僕は『何か』をするのを諦めて、部屋に戻ろうとした時だった。

「えっ!? それ、本当かよ?」
一階から、兄である吹雪の声がした。

静かに階段を下りていくと、リビングルームから明かりが漏れていた。

(何をしているんだろう? こんな時間に……。)
こんな時間に自分は目が冴えて、何をしようか戸惑って居たんだがな、と思いながら、僕は音を立てない様にして、リビングルームの戸をほんの少し開けた。

見ると、リビングルームにあるガラステーブルを取り囲んだ白い、一人用のソファに、僕を抜いた家族全員が座っていた。
一人一人が、何やら辛気臭い、暗い顔立ちをしていた。

僕は何を話しているか聞こうと、耳を傍立てた。

だが、とうの四人は、ずっと口を開かないままでいた。

重い沈黙が続いていた。

その沈黙を制したのは、兄、響貴だった。





「何で今更……っ! そんな……っ! 」
噛み締めるような、そんな感じの声だった。

僕は驚いた。
兄は今までこんな今にも泣き出しそうな声を出したりしなかった。少なくとも、僕の前では。
いつも元気な声を四六時中出していたのに。

僕はもっと耳を傍立てて聞いた。

「また……、伊吹に、何かあったりしたら、どうすんだよ? 」

今度口を開いたのは吹雪兄だった。
響貴兄と同様、泣き出しそうな口調だった。

「やっと俺達も苦しむ事なんか無くなってきたのに……。しかも、伊吹と同じ高校なんだろう? 」

父が言った。悲しそうな顔だった。

母は、何も言わない代わりに、目元にハンカチをおさえていた。だけど、涙は溢れていた。

(一体、何の話をしているんだ……? )

そう思っていた瞬間、僕にとって衝撃の一言を、父は放った。












「もう俺達一家を苦しめないでくれ……!! 本当にお願いだから……! 一琉ちゃん……! 」















————— 「え? 」














思わず僕は小さく呟いていた。












————— 一琉、だって?