コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 僕の涙腺を刺激するもの  ( No.189 )
日時: 2010/10/17 15:30
名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)

第19章 「愛しくて、苦しくて、悲しくて。」



悲しい心を抱えたまま、一琉はある場所へと向かっていた。

「零に、伝えなきゃね……。」
そう言って歩き出した末に辿り着いた場所。

総合病院、だ。










「すみません。3○5号室の身内の者ですが、現在は面会可能ですか? 」
フロントで、一琉は白いナース服を着た看護師に聞いた。

「3○5号室でしたら……。蒼真様の御家族の方でしょうか? 」
傍にあったカルテを見ながら、丁寧な口調で看護師が問いかける。

「はい、そうです。」
そう答えた後、一琉は真剣な眼差しで訴えた。

「今の零の容態は、十分に承知しています。会えない状況だという事も、分かっています。でも、せめて5分だけでも、面会時間を設けさせて頂けないでしょうか。」

そう言う一琉に、優しく微笑みかけ、看護師は言った。

「どうぞ。15分間だけでしたら、面会可能になります。」

その言葉に、一琉の顔が緩む。

「ありがとうございます。」
礼を言って、一琉はエレベーターに乗り込んだ。













————— 3○5号室 —————

3○5号室は、個室だった。

綺麗に磨かれているプレートには、『蒼真零』の文字。

息をゆっくりと吸って、一琉は病室のドアを開けた。

「零……。」
そう呟いて、一琉はベッドの真横にある椅子に座った。

ベッドには、目鼻立ちが整った、色白の美少年が横たわっていた。

「久しぶりだね。」

目を決して開けない美少年に、一琉は微笑みかけた。

決して、何があっても、この少年は目を開ける事は無いのに。

「私ね……、零に伝えたい事があって来たんだ……。」

一琉はじっとその少年の顔を見つめていた。

すると、窓から明るい一筋の光が漏れた。

それが余計に、一琉の心を締め付けさせた。