コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re:僕の涙腺を刺激するもの ( No.22 )
- 日時: 2010/10/17 14:39
- 名前: 風菜 (ID: NhY/JZtF)
僕は本棚から一冊の本を抜き出し、読み始めた。
何もおかしくないことを言ったつもりが、またもや水槻一琉は笑った。
「嘘つかない方がいいよ、泉くん。」
「……何が? 」
冷静に僕は聞き返した。
「フフッ♪ 」
もう一度、水槻一琉は笑い、そして僕に言った。
「……当ててあげましょうか? 」
と。
「泉君はね、自分のことをこういう風に思っているの。」
備え付きのパイプ椅子に座ると、水槻一琉は足を組んだ。
「『地味』、『無口』、『表情が無い』、『クラスの皆から気味悪がられている』……ってね。」
目を閉じて喋る水槻一琉。
「どう? 当たってるでしょ? 」
「当たってる? 」ではなく「当たってるでしょ? 」と水槻一琉は僕に質問を投げかけてくる聞き方をした。
「へぇ……。」
僕は窓の外を見て、うっすらと笑みを浮かべた。
「そう思った訳は? 」
背の低い本棚に僕は頬杖をつく。
「泉くんを観察して色々と気付いたことがあったの。」
「観察ねぇ……。」
僕はクスッと笑う。
「まぁ、観察って言っても、大した時間じゃないけどね。」
コンコンと長い爪で机を鳴らす水槻一琉。
よく見れば、彼女の爪には、無色のラメ入りのマニキュアが塗られていた。
「まず最初に分かったことは、泉くんの頭の良さよ。これは、私自身が得て知ったことじゃないんだけど。」
爪を鳴らすのをやめて話し出す水槻一琉。
「転校初日の今日、職員室に挨拶に行った時に、あの無能な教師が教えてくれたの。常に学年一位の「泉伊吹」って。まぁ、その時点では何とも思わなかったわよ。」
僕は頬杖をやめなかった。
「それでその次に分かったのが、『旧校舎に行く秀才美少年について』。」
楽しそうに話す水槻一琉。
「泉くんと同じクラスの人達が、旧校舎に行く君を見て、憧れの眼差しを向けたような口調でこう言っていたわ。『また旧校舎の図書室で読書だ。同じクラスの女子が尾行した時にもずっと本を読んでいたらしい』
……とね。」
うっすらと僕のように笑う水槻一琉。
一体彼女は、今日何回この笑みを作った?
「で、現時点で取り入れた情報を分析すれば、『泉伊吹は読書家』、そして『尾行されるぐらいの女子人気がある』ということが分かる。」
弾みつつも、落ち着いた声を無理なく維持する水槻一琉。
「では次にわかったこと。それは泉くんが『自分は無口』と勘違いしているということ。……コレは、あの旧校舎の図書室で分かったのよ。」
僕は彼女の話を楽しんで聞いていた。
どんな結果に達するのかということを。
「『無口だ』というのは、ただ単に泉くんが必要最低限のことくらいしか喋らないから、尾行してきた女子が自分に話しかけて来ないのだと。自分は世間で言う『無口』なのだと、泉くんはそう思った。つまり貴方は、尾行して来た女子に気付いていていたのよ。それを、『自分のやることに興味を示し、好奇心で着いてきたバカな女子』と自分で解釈した。……まぁ、簡単に言えばこういうことね。その他の『地味』、『表情が無い』、『クラスの皆から気味悪がられている』は、自己紹介する時に教室で全て分かった。」
そこまで言ったところで、僕は思った。
……コイツ、面白い。